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昔話『ドウゲン坂から』2

前回のあらすじ

愛の大切さを教えてください。

昔話『嘘つきすーくんとイカレたきーちゃん』




期末試験をすべて受け終えた私はホッと息を引き取りました。
























まあ嘘ですけどね。

そんな簡単に死ぬことができたら苦労しないのですよ。

期末試験が終わった翌日、私は大きな街にやってきていました。

忠誠心が高かったということで有名な犬の銅像前には人だかりができています。

あの犬が今この時代に生きていたら、あの犬の忠誠心マジヤバイ、と若者たちの間で話題になっていたのでしょうか。

そしてマスコミから注目を浴びて、某ケータイ会社のCMに出演している犬と人気を二分することになったかもしれませんね。

それから大晦日特別番組でリアル・ドッグファイトやってくれるのでしょう。

私(ヤバイ。超見てみたい)

私はガードレールに寄りかかって駅前にある犬の銅像を眺めていました。

確かにあそこは待ち合わせ場所として有名ですが、人が集まり過ぎて誰が誰だかわからないほどです。

だから私たちはスクランブル交差点を渡ったところで待ち合わせることにしたのです。

といっても、ここにはまだ私しかいません。

約束の時間よりずっと早く来てしまっていたからです。

でも、ここから駅前を見ていればすぐにきーちゃんと友が来たことがわかるでしょう。

「すーくん」

ほら、きーちゃんが私を呼ぶときの愛称が聞こえてきましたよ。

しかし声がしたのは前方ではなく背後からでした。

まったく、私が3ではなくて13だったらどうなっていたことでしょう。

「俺の背後に立つな」と言って見事な裏拳をキメているところですよ?

やれやれ、と頭の中で呟きながら私はゆっくりと振り返ります。

するとそこには――セーラー服姿の女の子が立っていました。

私「え?」

「すーくんですよね?」

私「あ、はい。すーくん……ですけど……」

自分で自分のニックネームを言うのって恥ずかしいですよね。

「よかった」

女の子はホッとしたような笑顔を見せてくれました。

私「えーと……」

「私のこと忘れちゃったんですか?」

今度は不機嫌そうな顔になりました。

感情表現が豊かというか色々忙しい子ですね。

私は目の前にいる女の子を今一度見つめ直します。

セーラー服がよく似合っています。

スクールバッグを肩に担いで、髪型はポニーテールで、足元は紺色のソックスにローファーです。

身分証明書がなくても「女子高生」であるということが彼女の容姿からすぐにわかります。

しかし私には女子高生の知り合いなんて……。

少し考えてから一人いたことを思い出しました。

私のことをすーくんを呼ぶのはきーちゃんしかいないと思っていましたが、きーちゃん以外にもいることを今思い出しました。

私「きーちゃんの……妹さん?」

妹「はい。お久しぶりです!」

ポニーテールがゆらりと揺れました。

きーちゃんの妹さん。

妹さんとはつい最近知り合ったばかりだから彼女のことはよく知りません。

初めて会ったのはきーちゃんのお家でした。

私はきーちゃんに騙されて妹さんとお話することになったのです。

彼氏と別れたばかりの妹さんの相談に乗ってあげて、そこで連絡先を交換しました。

しかし相談にのってからは一度も会っていませんし、メールなどで会う約束もしていません。

それなのにここで妹さんと会うということは、またきーちゃんが私に嘘をついて会う機会を設けたのでしょう。

きーちゃんは私と知り合ってから少しずつ嘘をつくようになりました。

まるでありすに出会った時の私のようです。

笑えませんね。

私「制服ってことは学校帰り?」

妹「はい。学校で夏期講習があったんです」

私「そっか。えらいね」

妹「いえ」

私「それで今日はどうしたの?」

妹「お姉ちゃんから聞いてませんか?」

とても嫌な予感がしました。

妹「すーくんといっしょに遊びに行こうってお姉ちゃんが……」

私「聞いてないけど、じゃあ今日は四人で遊びに行くんだね」

妹「いえ、今日はすーくんとわたしの二人だけだって……」

私「それも知らなかった……

妹「すみません。嫌ですよね……」

私「いや妹さんは何も悪くないし、全然嫌じゃないよ」

妹「……」

私「……」

初めて会った日もこんな風に話題がなくなって困りました。

あれから数カ月経ちましたが、今も私と妹さんの間には共通の話題というものはありません。

優れたコミュニケーションスキルってどうしたら得られるのでしょうね。

私の場合は、まず嘘をつくのをやめましょうと言われそうです。

背景は喧騒でいっぱいですが、私と妹さんの間には沈黙が流れています。

何か話すことあったかなーと思案していると、妹さんが少し大きな声で言いました。
















妹「おにいちゃん」















私「…………」

確かに私には血のつながった妹がいますし、おにいちゃんと呼ばれる立場にいます。

しかし血のつながりのない女の子からおにいちゃん呼ばわりされる立場にはいません。

あまりの衝撃発言に血の気が引いている私に妹さんは言いました。



















妹「すーくんは年下好きの妹萌えだから喜ぶって聞いたんですけど」














今ならナメック星で地球人たちにハメられたドドリアさんやフリーザ様の気持ちが分かります。

もしかしたら地球を破壊できるかもしれません。

いっちょやってみっか!

というのは主人公の台詞でしたっけ。

私「でも私は妹萌えじゃないから喜ばないよ」

妹「そうなんですか……」

妹さんの顔が少しだけ曇ったような気がします。

本当に色々忙しい子ですね。

私「じゃあ遊びに行こうか」

妹「はい。おにいちゃん♪」

私「その呼び方は固定なの?」

妹「ダメですか?」

固く握りしめた両手を胸の前に置いた女の子が上目遣いで訴えかけてくる図というのは色々ヤバイです。

しかも相手はセーラー服ポニーテール女子高生というオプションつきです。

私「好きに呼べばいいと思うよ」

妹「ありがとうございます」

それから私たちは並んで歩きだしました。

どうか警察の方々が誤解しませんように。

私(もし捕まったら、クリリンのことかー、と叫んでおこうかな)

国家権力がなんぼのもんじゃーい、の方がいいでしょうか。

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