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昔話『ドウゲン坂から』13

前回のあらすじ

「こけしが舞い、赤べこが飛び、シャケが落ちてくる。これって日常だね」

それはあらゐけいいちの『日常』です。

「鳩が舞い、飛行船が飛び、女の子が落ちてくる。親方、空から女の子が!」

それはジブリの『天空の城ラピュタ』です。

「アル中が舞い、ヤクザの指が飛び、ヤク中が落ちてくる。イカレてるよね」

それは私の『生まれた街』です。

「不況が舞い、首が飛び、失業者が落ちてくる。これって現実?」

それは現代の『日本』です。

「疑念が舞い、推測が飛び、結末が落ちてくる。これは本当にあった物語ですか?」

それは昔話の『ドウゲン坂から』です。






世界のどこかで誰かが死にたいと思っている時、私は日本の首都にいました。

目の前にはビルがあります。

背後には植木があります。

隣には血のつながらない妹がいます。

世界のどこかで誰かが命を散らそうとしている時、私は考え事をしていました。

空から落ちてきたイカレた女の子と私の頭がごっつんこすればいいのに、と。

君が私で、私が君で――といった展開は望んでおりません。

そんな展開を望んでいる方は、ネジの先っぽを2cmほど削ってから頭に刺してみると良いかもしれません。

ぐるちゅわぁ~ってなりますよ♪

自殺者が飛び降りた先に人がいて、ぶつかった衝撃でその人が死んでしまうと、自殺者は自殺者でなくなってしまうのでしょうか。

まあ、そんなことはどうでもいいのです。

持っていたお弁当箱のふたを閉め、私は食後のあいさつをしました。

私「ごちそうさまでした」

妹「……お粗末さまでした」

偽妹ちゃんは表情を曇らせています。

まるで今日の空と……全く違いました。

日差しも強いですし、気温も高いですし、まさに真夏日と言うにふさわしいでしょう。

私「今日は暑いね」

妹「そうですね……」

私「夏だからねー」

妹「あの……」

私「なに?」





















妹「いつから気づいてました?」

















私「最初から」

















私は平然と答えます。

私「最初におかしいと思ったのは、偽妹ちゃんが駅方面から来なかったこと」

私は約束の十分以上前にやってきて、犬の銅像の前ではなく、交差点を渡った先で待っていました。

そこのガードレールに背中を預けたまま、ずっと駅の方を見ていました。

きーちゃんと友くんがやってきたかどうかをすぐに気づくためです。

しかし、実際にやってきたのはきーちゃんの妹さんで、正面からではなく背後からでした。

どうして着いたばかりなのに私の後ろから来たのでしょう。

どうして今来たばかりだと嘘をつく必要があるのでしょう。

私を驚かせるため、というくだらない理由でやったのなら納得できます。

でも、そんな面倒くさいことをする女の子ではないと思います、偽妹ちゃんは。

まあ、それだけなら少しおかしいなと思うくらいで気にもしなかったでしょう。

問題はその後です。

血のつながらない兄妹プレイを始めた私達が歩いていくと、一人の男子高校生に会いました。

その男子高校生は偽妹ちゃんと私の顔を見ると、すぐにいなくなってしまいました。

ドがつくほどの田舎なら遊びに行った先で友人とばったりなんてよくある話です。

しかしここはド田舎ではありません。

しかも会ったのが元彼氏らしき人なんて……偶然にしてはできすぎですよね。

さて、あの男子高校生が本当に偽妹ちゃんの元彼氏かどうかを確かめましょう。

私「あの時会った男子高校生は偽妹ちゃんの元彼氏?」

妹「はい……」

偽妹ちゃんは力ない声で言いました。

どうやら私の予想は当たっていたようです。

続けてもう一つの予想も聞いてみます。

私「元彼はバスケ部? それともサッカー部?」

ポイントガードか。

もしくはミッドフィルダーだと思います。

妹「帰宅部ですけど……」

私「……」

ああ、なるほど。

どおりで足腰がしっかりしているわけですね。

気を取り直して話を戻します。

私「あれもおかしいと思ったんだよね。あんな何もないところで男子高校生が友達と待ち合わせるとも思えないし、私達のことを見たらすぐに行っちゃうし」

妹「……」

私「本当は、元彼と来てたんでしょ?」

妹「……」

今日、私と会うずっと前から。

私を利用して何かを達成するために。

なんとなく予想はつきますが、これは偽妹ちゃんの口から聞きたいです。

私は何も言わずに偽妹ちゃんが話してくれるのを待ちます。

そして彼女はゆっくりと口を開きました。

妹「おにいちゃん。ごめんなさい」

私「ううん」

妹「さっき会った人が……私にとって初めての彼氏だったんです」

私「そうなんだ」

意外です。

偽妹ちゃんは可愛いから恋愛経験がもっと豊富だと思っていました。

意外と言えば、彼女の姉であるきーちゃんも大学に入って初めて異性と付き合ったらしいです。

妹「でも付き合ったら何すればいいのか分からなくて、お姉ちゃんに色々聞いてがんばったんですけど、半年もしないうちにフラレちゃいました……」

私「……………………」

経験が乏しいどころか、恋愛観が曲がっているお姉ちゃんに助言を求めたのがいけないんじゃないか……と言うのはやめておきましょう。

妹「でも、フラレた原因は別にあるんです」

てっきり「初デートに弁当持ってくる女は重い」という理由でフラレたのだと思っていました。

はい、ごめんなさい。

失礼ですよね。

妹「元彼を家に連れていったことがあるんですけど。たまたまお姉ちゃんが家にいて、元彼はこう言ったんです」

私「…………」

そこから先は聞きたくありませんでした。

偽妹ちゃんの声がどんどん悲しみを帯びていくのが分かったからです。

それでも偽妹ちゃんが話したいというのですから、私は聞くしかありません。

偽妹ちゃんは震える声で言いました。

















妹「お前の姉ちゃんかわいいし……お前よりも胸でかいな……って」




















私「元彼は本当にそんなことを言ったの?」

妹「はい……」

胸の小さい女の子は好きか嫌いか、という変な質問をした理由が分かってしまいました。

同時に、元彼氏に対する怒りがふつふと湧いてきました。

おかしいですよね。

本当におかしな話です。

私が偽妹ちゃんの元彼氏に怒る理由も意味もないのに。

本当に怒りたいのは私じゃなくて偽妹ちゃんだというのに。

妹「昔からそうなんです」

偽妹ちゃんは今にも泣き出しそうな声で話します。

私「なにが?」

私は本当に何のことか分からずに聞きます。

妹「昔から私は、何をやってもダメなんです」

私「……」

そんなことないよ、と言うのは簡単ですが、何も知らないのにその言葉を口にしても無駄です。

妹「お姉ちゃんは、私なんかと違って何でもできるんです」

私「……」

妹「でも私は……何もできないし……人に頼ってばかりだし……」

偽妹ちゃんは今にも泣き出しそうな声でしゃべり続けます。

その全てが自分自身に対する悲観的な言葉ばかりです。

途中まで黙って聞いていましたが、だんだん面倒になってきました。

本当に面倒くさいです。

これ以上面倒なことに巻き込まれたくないので口を開きました。

















私「馬鹿でしょ?」



















あ、勘違いしないでくださいね。

元彼氏のことではなくて偽妹ちゃんのことですよ?

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