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2012/10/24 本『家守綺譚』 梨木香歩
本『家守綺譚』 梨木香歩 新潮社 私は卒業後、売れもしない文章を書いて相変わらず学生の時に下宿に居座り続けていた。 他に行くあてもなかったし、引越しの算段もつかなかったからである。
2011/09/07 本『西の魔女が死んだ』 梨木香歩
本『西の魔女が死んだ』 梨木香歩 新潮文庫 「おばあちゃん、大好き」 「アイ・ノウ」 それは二人だけの秘密の合言葉。 【西の魔女が死んだ】 西の魔女が死んだ。

本『家守綺譚』 梨木香歩

『家守綺譚』 梨木香歩 新潮社



私は卒業後、売れもしない文章を書いて相変わらず学生の時に下宿に居座り続けていた。

他に行くあてもなかったし、引越しの算段もつかなかったからである。

ある時、亡くなった友人の父親から家の守をしてくれないかと頼まれる。

友人の名は高堂といい、湖でボートを漕いでいる最中に行方不明になった。

その家に住んで毎日窓の開け閉めなりしてくれたなら月々のものをくれるという。

ときたま雑誌に掲載されるくらいの稼ぎでは食べていけない。

渡りに船ということで、私はその次の春から越してきた。

そんなある日、床の間の掛け軸から何か聞こえてくる。

物音というよりも人の言葉のような……イレテクレヨウ……。

床の間を見ると、掛け軸の中のサギが慌てて脇へ逃げ出し、その向こうからボートが一艘近づいてくる。

漕ぎ手はまだ若い……高堂であった。

――どうした高堂。

私は思わず声をかけた。

――逝ってしまったのではなかろうか。

――なに、雨に紛れて漕いできたのだ。

高堂は、こともなげに云う。

庭・池・電燈付二階屋。

汽車駅・銭湯近接。

四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多……。

本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき電燈つき二階屋との、のびやかな交換の記録である。

関連作品

本『家守綺譚』 

本『西の魔女が死んだ』

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本『西の魔女が死んだ』 梨木香歩

『西の魔女が死んだ』 梨木香歩 新潮文庫

「おばあちゃん、大好き」

「アイ・ノウ」

それは二人だけの秘密の合言葉。



【西の魔女が死んだ】

西の魔女が死んだ。

学校で理科の授業が始まろうとしているときだった。

すぐにお母さんが来るから帰る準備をして校門のところで待っているように言われた。

何かが起こったのだ。

まいは言われたとおり校門のところでママを待った。

ほどなくママの運転する車がやってきて、まいが乗り込むとすぐに発進した。

「何があったの?」

と、まいはおそるおそる訊いた。

ママは深くためいきをついた。

「魔女が――倒れた。もうだめみたい」

突然、まいのまわりの世界から音と色が消えた。

まいは体がどんどん重く沈みこんでいくように感じた。

そして二年前の、季節が初夏へ移り変わるちょうど今ごろ、おばあちゃんと過ごした一カ月余りのことを急に思い出した。

中学に進んで間もなく、学校に行けなくなったまいは、西の魔女のもとで過ごした。

田舎のおばあちゃんの家で暮らすことになったまいは、魔女見習いの修業を受ける。

魔女修業で一番大事なことは――何でも自分で決める――ということだった。


【渡りの一日】(文庫版併録作品)

その後のまいの物語。

加納さんがやってきたという母の順子の言葉で目が覚めた和邇ショウコ。

洗面を済ませて、茶の間に入ると、加納まいが待機していた。

今日、ショウコとまいは杖差山に登ってサシバの渡りを見ようと前から約束していた。

だが、何事も適当なショウコのおかげで予定はなしになってしまった。

がっかりするまいに順子は展覧会の券を二枚渡す。

以前からその展覧会に興味があったまいは、すぐにショウコといっしょに家を出る。

だが展覧会会場のバスに乗ろうとしたとき、猛スピードで走ってきた自転車とぶつかりそうになり……。

関連作品

本『家守綺譚』 

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