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ショートショート『おままごと』

幼い娘といっしょに砂場でおままごとをしている母親。
娘が作ったどろだんごを見て母親は思い出にふける。
自分がまだ子どもだった頃、今と同じように砂場でおままごとをしていた頃のことを。








ショートショート『おままごと』

「あい。どーぞ」
 砂場遊びが大好きな娘が泥だんごをくれた。
「ありがとう。パクッ! モグモグ! わあ、おいしい!」
 私が泥だんごを食べたふりをして笑うと娘も満足そうに喜んでくれた。

 公園の砂場に来るといつも脳裏に浮かぶ。
 仲のよかった女の子との楽しい思い出を。
 一人でさびしそうに遊んでいた彼女に私から声をかけたのを今でも覚えている。
 いじわるな友達はあの子を仲間外しにしていたし、親からもあの子といっしょに遊んだらいけませんと言われていた。けれど、せめて私だけは仲よくしてあげたいと思った。
 私たちは砂場でおままごとをしながらいろいろなものを作った。
 三角形のおにぎりやふっくらオムライス、それからまん丸チョコレート。
 料理を作るのはいつも私で、食いしん坊な彼女はいつも食べる係だった。彼女はどんな料理でも残さず食べてくれたから、私もうれしくてよく笑っていた。
 この関係がずっと続けばいいと思っていたのに、彼女は突然引っ越すことになった。
 お別れの日は、ちょうどバレンタインデーだった。
 私はすぐに四角い箱に丸めたチョコレートを並べて、きれいな包装紙で包んで渡してあげた。
「私のことずっと忘れないでいて。ね?」
 チョコレートを受け取った彼女は涙を流して喜んでくれた。

 思い出に浸っているうちに娘が泥だんごを口に運ぼうとしていたので注意する。
「本当に食べちゃダメよ」
 娘は小さくうなずいて砂をいじり始める。
 私は言うことを聞く素直な子が大好きだ。
 どこからかボールが転がってきた。
 それを追いかけるように小さな女の子とお母さんらしき人がやってくる。
 私はボールを女の子に渡してやると、お母さんの顔をじっと見つめる。
 もう何十年も会っていなかったけれど、すぐにあの子だと気がついた。
 驚いている彼女に私は微笑みかける。



















「また仲よくしましょう。あなたの大好きなチョコレートをたくさん作ってあげる。ね?」

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