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昔話『笑年傷女』

笑年傷女――。

あの頃の私と×××を表現するのに、これほど適切な言葉はないと思います。

彼女は私と同じような境遇の人でした。

他人に心を傷つけられて精神が崩壊してしまったのです。

私は「笑う」ことで弱い精神を守るようになりました。

この世で最も嫌いな人の真似をすることで、嫌いな人と上手に生きていく術を得たのです。

×××は「傷つける」ことで弱い精神を守るようになりました。

傷つけられることを恐れるあまり、自ら傷つける人になってしまったのです。

どうしようもなく弱くて、どうしようもなくイカレています。



夏で、被害者で、加害者でした。

愚かな加害者たちは、何者かの手によって平穏な日常を奪われました。

何が正しくて何が間違っているのか、それは誰が決めるのでしょうね。

少なくとも当事者ではないと思います。

私(このクラスにいじめはありません☆)

一般人面した狂人がおもしろくもない冗談を夢想します。

世界から戦争を無くすことと学校からいじめを無くすことは、どちらが難しいでしょうか。

七月に入ったばかりで日差しが強くて風もない蒸し暑い日のことです。

ある日、ぽっかり空いた席を排除するために席替えが行われることになりました。

始めに「ブラックボックス」という名のくじ引きのためだけに作られた箱が教卓の上に置かれます。

それと同時にクラスメイトが一斉に席から立ち上がり、教卓にかけよってくじを引いていきます。

それからくじの番号と黒板に書かれた座席の位置を確認し、悲鳴や歓喜の声をあげて自分の席に戻っていきます。

その声を聞いて、机を枕にして眠っていた私はようやく目を開けました。

昨夜、私は図書館から借りてきた本を読んでいました。

私の精神が崩壊した原因を探るためです。

しかし、いくら読んでも精神崩壊の詳しい原因や理由は解りませんでした。

結局「己の弱さが原因」と結論を保留しておきました。

箱に残されたくじは、残りが少ないらしくてなかなか見つかりません。

ようやく箱の隅にあったくじを引くと、黒板に書かれた位置と照らし合わせて戻ります。

するとそこには、顔面にソース焼きそばを乗せたような顔色の少年が私の机を動かし始めていました。

私「なに、Rが移動してくれるの?」

私が声をかけると、手を休めて小さく微笑みました。

R「違うよ。今度はこの席になったから移動させてたんだ」

私「なんだ残念」

R「お前の移動する場所は?」

私は持っていたくじを彼に見せました。

それを見たRは少し心配そうな声で言ってきます。

R「気をつけろよ」

私「なぜ?」

R「13」

私「それが?」

R「バカ。死刑台の階段の数と同じだから不吉な数字なんだよ」

私「へぇ。知らなかった」

日本では4が死を連想させるから不吉な数字と言われていますよね。

外国では13がそれに当たるようです。

その話を頭の隅に置いて、私は机を持って13の場所に向かって移動します。

すでにほとんどのクラスメイトが席を移動し終えているので動きにくいです。

死刑宣告を受けた人の気持ちになって移動してみても動きやすさは変わりませんでした。

ようやく13の場所にたどり着くと、隣の席にはすでに一人の女の子が座っていました。

私「……」

くしゃくしゃの長い黒髪の女の子が頬杖をつきながら窓の外を眺めています。

そしてなぜかこの暑い日に長袖のシャツを着ています。

夏の太陽の日差しにやられてしまったのでしょうか。

気になった私はその子に話しかけてみました。

私「暑くないの?」

女「……」

反応がありません。

呼吸はしているようですし、動きはありますから屍ではないと思います。

もう一度聞いてみます。

それでダメなら言語による会話は諦めます。

私「ねぇ、暑くないの?」

女「……暑いけど」

少し遅れて彼女から返事がきました。

顔は窓の外に向いたままです。

こちらを向いて話そうとする気配は全くありません。

いつもの私ならここで会話するのを諦めてしまっていたと思います。

しかしどういうわけかその時の私は『諦める』という選択肢を持っていなかったのです。

私「半そでのシャツを着ればいいのに」

女「あんたに関係ないでしょ」

確かに関係ありません。

私「でも、尋常じゃないほど汗が出てるよ」

女「うるさい」

私「保健室行く?」

女「うるさい!!」

初めてこちらを向いたと思ったら、彼女は大声で叫んでいました。

そして同時に私の頬を平手打ちしていました。

パァンという乾いた音が教室中に響き渡り、皆の視線が私達に注がれます。

女「くっ」

少女は席を離れて教室を出ていきました。

後に残された私はクラスメイトと教師の視線を浴びながら考えていました。

私(あの子の名前って何だっけ)

こうして私は彼女に出会ってしまったのです。

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