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昔話『笑年傷女』 10

前回のあらすじ

よろしい、ならば戦争だ

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もしあなたの友人が道を違えた時、あなたはどちらの行動を取るでしょうか。

どんな手段を使ってでも正しい道へと引き戻しますか?

T「そういうわけだから放火なんてやめろ。な?」

R「若気の至りってことで今なら間に合うよ?」

それとも、あなたもいっしょに違えた道を歩きますか?

女「あんた達には関係ない。これはあたしの、あたし達の問題なの!」

私「……」

ヘラヘラ笑うTとRに対し、彼女は怒りで我を忘れてしまっています。

怒るのはいけません。

怒りは人の思考を鈍らせ、冷静な判断ができなくなりますから。

私は笑っていません。

私は怒っていません。

私は冷静な判断を下すために思考します。

門の前では二人の親友が通せんぼしています。

Rを殴り倒したところで門を突破することはできません。

それにRを一発で倒す力も技もありませんからね。

殴りかかれば抵抗もされるでしょう。

そうなればTに殴り倒されてしまいます。

かといって、Tを先に倒そうと殴りかかったところで倒せるわけがありません。


「やってみなきゃわからない!!」


漫画やアニメでよく見られる台詞ですね。

胸が熱くなる少年漫画や心がときめく少女漫画で何度も見たことがあります。

しかし、本当にやってみなければわからないのでしょうか。

もしも現実でそんな言葉を口に出す人がいたら、その人は自分の能力を過信しすぎているか、根拠のない自信に自惚れているだけです。

どちらにせよ、冷静な判断ができていません。

もちろん漫画やアニメではどんどん使ってくださいね。

なぜなら、その言葉を使わなければ物語は中途半端な状態のまま終わってしまいますから。

窮地に陥った主人公が「もう無理だ……」と言い残して終わってしまう物語なんて嫌に決まっています。

おそらく「○○先生の次回作にご期待ください」と書かれても次回作は書かせてもらえないでしょう。

ネットでは賛否両論の嵐だと思います。

「作者ぶん投げやがった」「作者死ね」とか「作者は天才」「この終わりが理解できない奴はアホ」とか散々言われてしまうのでしょうね。

さて、現実でそんな状況に立たされてしまった私はどうするべきなのでしょうか。



















私「空を自由に飛びたいなぁ」

女「は?」

T「ドラえもん!」

私「正解」

安定の現実逃避です。

しかしこれはその場凌ぎに過ぎません。

R「頭大丈夫?」

私「大丈夫だよ。私は日本人だ」

R「いや、大丈夫じゃないだろ」

私がドラえもんを愛し続ける日本人であることを証明しただけです。

それなのに頭がおかしいとは失礼な判断です。

私「私は大丈夫だし、恐ろしいくらい冷静だよ」

私は不安定な心のバランスを保つために愛想笑いを浮かべます。

女「そんなことより早くこいつら倒してよ」

少女は親友二人を指さして私に命令します。

T「おう。やるか?」

R「いつでもかかってきなよ」

TとRはいつものように拳を固めて構えました。

その表情はいつもより楽しそうに見えます。

私もそれを見て楽しい気分になってきました。

























私「帰ろうか」


























これは現実逃避ではありません。

戦略的徹底というものです。

女「ちょっと待って。あんた何言ってんの?」

一瞬放心状態になっていた彼女がなんとか意識を取り戻しました。

私「誰も計画を中止にしようなんて言ってない。延期するだけだ」

女「意味わかんない。なにそれ? ふざけないで!」

私「……」

ため息をつきたくなるほど呆れてしまいそうです。

失礼ですが、あなたの脳みそは筋肉でいらっしゃいますか?

現実で「やってみなきゃわからない!」と言っちゃう友情努力勝利信者ですか?

面倒ですね。

もし私に何かしらの才能があったら「ごめん」と言って首に手刀を放って彼女を気絶させていたでしょう。

そうして彼女を抱えて「今日は邪魔が入った。しかし次は必ず……」とツンデレ気味な台詞を残して去っていたでしょう。

けれど私はそういった類の才能は持っていません。

せいぜい頭のおかしなキチガイを惹きつけるのが精一杯でしょう。

今はこれが精一杯、ではなく、これが私の限界なのです。

塔に幽閉されたお姫様を助ける役目は大泥棒にお任せしましょう。

今の私の役目は冷静な判断で最良の決断をすることです。

私「私はあの二人を相手にして勝てない」

女「……」

私「ていうか無理。死んじゃう」

女「……」

私「だからここは一旦退いて……」

女「もういい。わかった」

私「それならもう」

女「あんたなんかに頼らない。もう誰にも頼まない!」

私「……(゚д゚ )」

彼女はそう言うと、前門の虎たちに向かって突進していきました。

R「(゚д゚)」

T「はっ」

私と似たような反応をするRは動けませんでした。

しかしTはダンジョンの最上階に君臨する魔王の如き笑みを浮かべて拳を突き出しました。

女「うぅ……」

その拳は腹に突き刺さり、彼女はその場で蹲ってしまいました。

私は彼女を止めるべきだったのです。

Tは、女や子どもを相手に手加減してくれるような優しい紳士ではないのですから。

私が彼女に駆け寄り意識を確かめます。

彼女はしゃべることもままならない状態でしたが、苦しそうに呼吸しています。

顔じゃなくて腹を殴ったのはせめてもの優しさでしょうか。

多分、違うと思います。

T「帰るわ」

Tは吐き捨てるように言いました。

R「ちゃんと家まで送り届けろよ。それから――」

Rは手を差し出してきます。

何のことかわかんなーい、と頭の中がお花畑の人を演じてみます。

しかしRの目はずっと鞄に注がれていました

私は仕方なく鞄を差し出します。

R「じゃあな」

私「また明日」

その鞄がいつ私の手元に返ってくるかは誰にもわかりません。

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