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昔話『About A ××××』12

前回のあらすじ

××××は愛想笑いを覚えた。

人を信用することを忘れた。




愛想笑いを自分の物にして一年ぐらい経ちました。

私は愛想笑いをすることで心の平穏を手に入れました。

不安定な心のバランスを愛想笑いで保っているのです。

私(めんどくさい……)

頭の中でそんな考えが浮かび、マンションのエレベーターは下りていきます。

マンションを出てから寂れた商店街を通って学校に向かいます。

私(何もなくてつまらない街……)

そんなことを考えているうちに校門が開いたばかりの学校に到着しました。

私は家族のだれよりも早く家を出て、クラスメイトのだれよりも早く学校に着いていました。

あの日からずっとそうしてきました。

他の人からしたら無意味なことかもしれませんが、私にとっては意味のあることでした。

意味のあることだと解釈したかったのかもしれません。

私(世の中に無駄なことはあっても無意味なことはないと言ったのは誰だっけ?)

引き続き、考えごとをしながら二階にある三年生の教室に入ります。

誰もいないと思っていた教室には、名前の覚えていないクラスメイトが私の席に座っていました。

そいつは黒いランドセルからヨーグルトと紙製スプーンを取り出し、おいしそうに食べ始めました。

学校で給食以外の食事をしているのはとてもおかしな光景に思えました。

教室の出入口で立ちつくしたまま私は彼を眺めます。

私の存在に気づいた男が満面の笑みを浮かべて声をかけてきました。

「おやつ食うのがそんなにおかしいか?」

私「べつに。ってか、どうして教室で食べてるの? 家で食べればいいのに」

彼の言った「おやつ」という単語がとても可愛く聞こえました。

「馬鹿。学校で食うからうまいんだろ」

クラスメイトは笑みを崩しません。

私は無表情と無関心を崩しません。

私(学校で食べても家で食べても同じだと思うけど)

どちらで食べても気分がよろしくないのは一緒です。

彼はヨーグルトを一気に口の中に流し込んでから、ごっそさんと言って机を枕にして寝始めました。

人の席に勝手に座って勝手に食事して勝手に寝ようなんてどこまでも勝手な奴ですね。

私「そこ、私の席なんだけど」

「お前だれ?」

私「××××」

「変わった名前だな」

私「いいからどいてよ。私は本が読みたいんだ」

T「俺、T。よろしくな」

Tは立ち上がって席を譲ってくれました。

元々私の席だから譲るもなにもないのですけどね。

私より頭一つ分背の高いTは少しずつ歩み寄ってきます。

そうしているうちに廊下の方からランドセルの揺れる音と足音が聞こえてきました。

その音は徐々に大きく、近づいてきていることがわかりました。

そして音の正体が私とTのいる教室に入ってきます。

「おっはよー!」

元気のいい挨拶が私耳に飛び込んできました。

背丈は私と同じくらいで、ソース焼きそばみたいな顔色をした少年でした。

名前は……忘れました。

ソース焼きそばみたいな顔をした少年は、ポケットの中でチャラチャラと何かをかまっています。

彼は私の姿を確認すると、ニコリと素敵な笑顔を見せてくれました。

それから私の後ろに立っていたTにも笑いかけると、すぐにまわれ右をして教室を出ていきました。

Tは近くにあった黒い鞄を手に取って私に声をかけてきます。

T「お前も来いよ。楽しいぜ!」

私は返事をする間もなく彼に手を引かれて走り出していました。

手を引っぱられたまま私は走り続けます。

そのうち私とTの手が離れました。

それなのに不思議と私の足は動き続けていました。

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