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本『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lolipop or A Bullet』 桜庭一樹

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lolipop or A Bullet』 桜庭一樹 角川文庫

その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。

見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。



中学二年の秋頃、転校生の海野藻屑があたし(山田なぎさ)のクラスに乱入してきた。

通路を挟んだ隣の席の男子生徒、花名島がボソッと教えてくれた。

彼女の父親は海野雅愛だと。

海野雅愛はちょっと昔の有名人で、この町の人間なら誰もが知っている曲を歌っていた。

その曲は二番まではとても綺麗だが、三番は、まるで快楽バラバラ殺人だ。

海野藻屑は「へんなやつ」だった。

小刻みに震えているし、二リットルボトルのミネラルウォーターをいつも持っているし、自分は人魚だと言いはるのだから。

自己紹介を終えて席につこうとする時、彼女は派手に転んだ。

立ち上がった後、海野藻屑はあたしを見て「死んじゃえ」といった。

あたしは顔をしかめてそっぽを向いた。

一番興味を示していなかったあたしが、なぜ毒づかれなければいけないんだ。


あたし、中学生の山田なぎさは実弾を求めていた。

一刻も早く社会に出て、お金という“実弾”を手に入れようとしていた。

1LDKのボロボロの公団住宅に母と兄とあたしの三人で暮らしている。

母一人の稼ぎと、ほんの少しの生活保護で生活していた。

兄は中学に行かなくなって、高校受験もしないで、家から一歩も出なくなった。

そのため生活はとてもキツイ。

何も買えない。

だからあたしは実弾を求めている。

中学を卒業したら自衛隊に入って、兵士になるつもりだ。

実弾以外のことには興味がない。

そのため、海野藻屑という少女にも無関心だった。

それなのに、海野藻屑はなにかとあたしに絡んでくる。

嘘つきで残酷だが、魅力的な容姿の彼女とあたしは徐々に親密な関係になっていく。

だが藻屑は、いつも痛そうに足をひきずっていて、その足は父親の虐待によるもので……。

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