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昔話『About A ××××』9

前回のあらすじ

教師=聖職者

そんなアホみたいな幻想を抱いている方はいるのでしょうか。

教師も同じ人間ですよ。

汚い奴もいれば頭のおかしい奴もいます。



あの日、私はいつものように登校しました。

それからいつものように教室に入り、いつものように友達と話すつもりでした。

しかし、教室の雰囲気だけはいつもと違っていました。

肌で感じたわけではなく、目と耳でそれを感じたのです。

私「……」

辛そうに泣いている女の子。

その子の周りでなぐさめようとがんばっている少女達。

そこから遠く離れて興味がなさそうに眺めている少年達。

私「ねぇ、あの子はなんで泣いてるの?」

私は友人の一人に事情を聞きます。

友「筆箱がなくなったんだってさ」

友人は事実だけを述べます。

私は少しだけ可哀想に思いながらも他人事のように彼女を見ました。

小さな手で何度も何度も目を擦っている女の子。

友達が心配そうに何があったのか問いかけても答えようとしません。

そのうちチャイムが鳴り響き、女教師がやってきました。

こういった問題に慣れていない若い女性教師はその光景を見て戸惑いました。

トラブルに巻き込まれた映画版のドラえもんの比ではありません。

女「どうしたの!? 何があったの!?」
 
泣いていた女子は担任教師の顔を見て少しだけ安心したのか、少しずつ話し始めます。

女子「朝ね、ランドセルを見たらね……筆箱がなくて……机の中にもね……なかったの」

それだけ言うとまた泣き出しました。

私(家に忘れてきたんじゃないのかよ……)

頭の中で毒づきながらその子の隣の席に座りました。

泣きじゃくる声がうるさいです。

しかし、そこが私の席だから座るしかありません。

女性教師は相変わらず困惑しているようでした。

そのうちしびれをきらした周りの男子生徒達が騒ぎ始めます。

「誰かがこいつの筆箱盗ったんだよ!!」

「犯人探さないとダメじゃーん」
 
複数の男子たちが全員の机やランドセルの中身を見てまわっていきます。

筆箱は誰のところからも見つかりません。

男子たちにはそれが不満だったようで、よりいっそう騒ぎ始めます。

今まで泣いている女子の背中をさすっているだけだった女教師がようやく口を開きました。












女「君はなにか知らないの?」












女性教師が私に目を向けています。

とても嫌な目でした……。

私「知りません」

女「この子の隣の席に座っているなら何か知ってるんじゃないかな?」

私「知りません」

それから何度も似たような質問を私に投げかけます。

最初はちゃんと答えていましたが、私は同じ事の繰り返しに耐えきれず言ってしまいました。

私「もうやめてください。私は知りません!」

今まで感情を押し殺して生きてきた私です。

けれど、感情を押し殺して生きるなんてできるわけありません。

だって私は人間だもの。

人形のように生きていても人間ですよ。

血が通った体を持ち、傷つき壊れやすい心を持った人間なのです。

そして同じように、女性教師も人間です。















女「犯人は貴方しか考えられないのよ!!」


















私「え……」
 














何が起こったのか全然分からなかったです。

何か言おうとしても言葉にできず、目の前にいる教師を見ることしかできませんでした。

しかし彼女は冷めた目つきで私を見返すだけです。

その目がとても怖くて、周りを見渡すと同じような目で私を見る友達がいました。

隣の女の子も目を真っ赤にして私を見据えています。

そして追い打ちをかけるように教師は冷たく言い放ちました。




















女「早く盗んだ筆箱を出しなさいよ」

















その瞬間、私の心は壊れました。

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