Date:2011/09/11 21:31
前回のあらすじ
ありす:泣けない子
私:笑えない子
まあ嘘だけどね。
ありす:泣けない子
私:笑えない子
まあ嘘だけどね。
私とありすはいつも読んだ本の話をします。
あの本はおもしろくない、あの本はおもしろい、そんなことを話します。
しかし、どんなに仲のいい友達同士でも話題がなくなって沈黙してしまうことがあります。
そんな時、私は気になっていたことを聞きました。
私「ありすの夢はなに?」
あ「夢?」
私「うん。やりたいこととかなりたいものとか」
あ「わたしは小説を書きたい」
私「小説家になりたいの?」
あ「うん!」
ありすはとても楽しそうな笑顔で返事しました。
私「ありすならきっとおもしろい物語を書けるよ」
根拠もないことを言ってはいけませんと誰かに教わった気がしますが、誰に教わったかわからないので私の捏造かもしれません。
あ「××××の夢はなに?」
私「…………」
その質問は予想していましたが、すぐには答えられませんでした。
なぜなら私には夢らしい夢がありませんでしたから。
適当な嘘をつけば済む話ですが、自分の夢に嘘をつくのはなんだかなぁと思ってしまったのです。
なかなか口を開こうとしない私を見かねてありすが言います。
あ「××××も小説家を目指そうよ」
私「え?」
あ「うん。それがいいよ」
私「ちょっと待ってよ、ありす」
ありすは私の言葉に耳も貸さず一人で勝手に納得しています。
何ということでしょう。
私の夢が他人に勝手に決められてしまいました。
友達とはいえ他人は他人です。
私「小説は好きだけど、小説家になんてなれないよ」
あ「なれる、なれないは問題じゃないよ。なりたいか、なりたくないかの問題だよ」
確かにそうですね。
しかし他人から差し出された「夢の選択肢」をそのまま選ぶのはどうかと思います。
しかも「小説家」しか選択肢がありません。
いくらなんでも選択肢が少なすぎです。
あ「××××はわたしと小説家を目指すのが嫌なの?」
彼女は上目遣いで私に聞いてきます。
私「嫌じゃない。むしろ目指したい」
私は邪念の入りまくった決意を固めました。
邪念は入りまくっていましたが、その決意は紛れもなく本物なのです。
その日から私とありすは小説家を目指すようになりました。
ある日、ありすといつものように話していた時のことです。
あ「わたしの中の記憶がどんどん消えていく」
私「何いってんの?」
突然、本当に突然のことでした。
何の脈絡もなくありすはそんなことを言い始めました。
いつもの彼女ならその後に「まあ嘘だけどね」と入りますが、今日はそれがやってきません。
あ「病気みたい。絶対に治らない病気らしいよ」
私「まあ嘘だけどね」
ありすが言わないのなら私が言います。
この話が嘘であってほしいからです。
しかし私の願いとは裏腹にありすの話は先に進みます。
あ「古い記憶から少しずつ消えていって、最後にはすべての記憶が消えて死んじゃうんだ」
私「……」
あ「記憶がなくなったら図書館の場所もわからなくなるね。
そうなったら君にも会えなくなるね。小説家にもなれないね」
私「……」
あ「何か言ってよ」
ありすは悲しそうな笑みを浮かべて言いました。
私「記憶が消えていくの?」
私は確認するために聞きました。
あ「うん」
私「どれくらいの速さで記憶は消えるの?」
あ「さあ」
私「分からないの?」
あ「うん」
私「そっか……」
あ「うん……」
私とありすの間に沈黙が流れます。
とても長い沈黙に感じられました。
そして嫌な沈黙でした。
私「記憶が消えてしまう前にどこか遊びに行こうよ」
私は愛想笑いを浮かべてお願いします。
あ「いいよ」
ありすは笑って承諾してくれました。
彼女はまだ笑い方を忘れてはいませんでした。
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あの本はおもしろくない、あの本はおもしろい、そんなことを話します。
しかし、どんなに仲のいい友達同士でも話題がなくなって沈黙してしまうことがあります。
そんな時、私は気になっていたことを聞きました。
私「ありすの夢はなに?」
あ「夢?」
私「うん。やりたいこととかなりたいものとか」
あ「わたしは小説を書きたい」
私「小説家になりたいの?」
あ「うん!」
ありすはとても楽しそうな笑顔で返事しました。
私「ありすならきっとおもしろい物語を書けるよ」
根拠もないことを言ってはいけませんと誰かに教わった気がしますが、誰に教わったかわからないので私の捏造かもしれません。
あ「××××の夢はなに?」
私「…………」
その質問は予想していましたが、すぐには答えられませんでした。
なぜなら私には夢らしい夢がありませんでしたから。
適当な嘘をつけば済む話ですが、自分の夢に嘘をつくのはなんだかなぁと思ってしまったのです。
なかなか口を開こうとしない私を見かねてありすが言います。
あ「××××も小説家を目指そうよ」
私「え?」
あ「うん。それがいいよ」
私「ちょっと待ってよ、ありす」
ありすは私の言葉に耳も貸さず一人で勝手に納得しています。
何ということでしょう。
私の夢が他人に勝手に決められてしまいました。
友達とはいえ他人は他人です。
私「小説は好きだけど、小説家になんてなれないよ」
あ「なれる、なれないは問題じゃないよ。なりたいか、なりたくないかの問題だよ」
確かにそうですね。
しかし他人から差し出された「夢の選択肢」をそのまま選ぶのはどうかと思います。
しかも「小説家」しか選択肢がありません。
いくらなんでも選択肢が少なすぎです。
あ「××××はわたしと小説家を目指すのが嫌なの?」
彼女は上目遣いで私に聞いてきます。
私「嫌じゃない。むしろ目指したい」
私は邪念の入りまくった決意を固めました。
邪念は入りまくっていましたが、その決意は紛れもなく本物なのです。
その日から私とありすは小説家を目指すようになりました。
ある日、ありすといつものように話していた時のことです。
あ「わたしの中の記憶がどんどん消えていく」
私「何いってんの?」
突然、本当に突然のことでした。
何の脈絡もなくありすはそんなことを言い始めました。
いつもの彼女ならその後に「まあ嘘だけどね」と入りますが、今日はそれがやってきません。
あ「病気みたい。絶対に治らない病気らしいよ」
私「まあ嘘だけどね」
ありすが言わないのなら私が言います。
この話が嘘であってほしいからです。
しかし私の願いとは裏腹にありすの話は先に進みます。
あ「古い記憶から少しずつ消えていって、最後にはすべての記憶が消えて死んじゃうんだ」
私「……」
あ「記憶がなくなったら図書館の場所もわからなくなるね。
そうなったら君にも会えなくなるね。小説家にもなれないね」
私「……」
あ「何か言ってよ」
ありすは悲しそうな笑みを浮かべて言いました。
私「記憶が消えていくの?」
私は確認するために聞きました。
あ「うん」
私「どれくらいの速さで記憶は消えるの?」
あ「さあ」
私「分からないの?」
あ「うん」
私「そっか……」
あ「うん……」
私とありすの間に沈黙が流れます。
とても長い沈黙に感じられました。
そして嫌な沈黙でした。
私「記憶が消えてしまう前にどこか遊びに行こうよ」
私は愛想笑いを浮かべてお願いします。
あ「いいよ」
ありすは笑って承諾してくれました。
彼女はまだ笑い方を忘れてはいませんでした。
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