忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



昔話『SuicideJetCity』 3

前回のあらすじ

場所は図書館。

隣には見知らぬ女の子が座っていました。



いつものように本を読んでいたら隣にだれか座ってきました。

本から目を離して、目をそちらに向けるとそこには――。

一人の女の子が座っていました。

女「なに読んでるの?」

私「……中国についての本」

女「ふーん」

女の子は興味がなさそうに返事します。

その後、私の前にある積まれた本たちの中から一冊取り出して読み始めました。

話しかけようかと思いましたが、読書の邪魔をするのもいけないと思ってやめておきました。

私も向けていた顔を本に戻して読書を再開しようと思いましたが、横にいる彼女の存在が気になって集中できません。

私は本を閉じて、思い切って名前を尋ねました。

すると、彼女は楽しそうな笑顔を浮かべて言いました。

女「ありす」

私「ありす?」

あ「そう。『不思議の国のアリス』のアリスと同じなんだよ」

彼女は微笑みました。

それを聞いた私は、彼女の容姿と全く合っていない名前だと思いました。

長くて真っ黒な髪。

黒いシックなワンピース。

黒い瞳。

名前負けしていないところがあるとしたら……白い肌ぐらいでしょうか。

私「それって本名?」

あ「違うよ」

私「じゃ本当の名前は?」

あ「ありす!」

私「どっちだよ……」

私が疲れたようにうな垂れると、彼女はまた楽しそうに笑うのでした。

それから私も自分の名前を教えました。

もちろん嘘偽りのない本当の名前です。

それを聞いたありすは少しだけ考える素振りを見せて聞いてきます。

あ「本名?」

私「そうだよ。君みたいに嘘なんてつかないよ」

この時の私はそれほど嘘つきではありませんでした。

愛想笑いを浮かべて人を騙す以外のことはあまりしていません。

あ「ふーん。変わったお名前ね」

私「たまに言われるよ」

いつしか私とありすは、本を読むことよりも話すことに夢中になっていました。

そのうち周りを気にせず話していたせいで図書館の司書さんに怒られてしまいました。

私「ごめんね」

私は申し訳なく思って小声で謝罪します。

あ「どうして謝るの?」

ありすは不機嫌そうに言ってきました。

私「だって君に迷惑をかけたから」

あ「迷惑かどうかはわたしが決める。それから君じゃなくてありすって呼んでよ」

私「えー」

初対面の女の子をいきなり名前で呼ぶのには、いささか抵抗がありました。

同じクラスの女子なら気軽に名前で呼べます。

しかし、どうしても彼女の名前を呼ぶのには勇気がいりました。

それは私が社交的でないからという理由ではありません。

困ったように愛想笑いを浮かべていると、彼女が私の手を取って立ち上がりました。

ヘタレな私は彼女に導かれるまま不思議の国の世界へ……行くわけがありません。

不思議の国に連れていくのはうさぎと決まっています。

彼女が向かった先は図書館の外でした。

あ「ここなら大きな声を出せるよ」

私「あ、うん」

あ「さあ。わたしの名前を呼んで」

私「……っ」

あ「声が小さい」

私「ありす!」

あ「そう。わたしはありすだよ」

ありすは満足したような笑みを浮かべて私の手をしっかりと握りました。

その日の帰り道、私とありすは別れ際にまた会うことを約束します。

私「さよなら」

私が去り際の一言を残して帰ろうとしたら、ありすは急に不機嫌そうに言いました。

あ「さよならは嫌い」

私「……」

あ「さよならを言うくらいなら何も言わないで帰る方がマシ」

私「じゃあ……またね?」

その言葉を聞いて納得した様子のありす。

面倒な女の子だなぁ、と思いつつも私は、またありすに会えることを喜びました。

1

2

3

4

5

6

7

8

9

人気ブログランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ blogram投票ボタン ブログランキング










拍手[0回]

PR

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿


この記事に対するトラックバック

トラックバックURL