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本『チルドレン』 伊坂幸太郎

『チルドレン』 伊坂幸太郎 講談社



独自の正義感を持ち、いつも周囲を自分のペースに引き込むが、なぜか憎めない男、陣内。

彼を中心にして起こる不思議な事件の数々――。

【バンク】

誰もが皆、自分がまさか銀行強盗の人質になるとは思わないだろう。

さらにアニメの登場人物のお面を被らされるとは思いもしないだろう。

大学生の鴨居もその一人だった。

一時間前、鴨居が陣内と仙台駅東口にある銀行に到着した時には、すでに店のシャッターが降りはじめていた。

ほとんどの人ならここで帰るだろう。

だが陣内は違った。

今日も理屈にならない理屈で自分の要求を通そうとしている。

ちょうどその時、猟銃を持った男が二人、飛び込んできた。

こうして鴨居と陣内は銀行強盗の人質となってしまう。

だが捕まった後も陣内は口を閉じようとせず、相変わらず自分の言いたいことをしゃべり続けていた。

【チルドレン】

家庭裁判所で家裁調査官として働いている武藤には、陣内という先輩がいる。

彼ほど調査官に向いている人間はいないと言われる人だ。

しかし、彼のやり方を真似してはいけないとも言われている。

ある日、新聞に誘拐事件が載っていた。

人質は隙を見て逃げたので助かったが、その事件の犯人はまだ捕まっていない。

その新聞を見ていた陣内は、武藤に言った。

「この犯人は、この家裁にやってきて君が面接することになる」

【レトリーバー】

大学卒業を控えた陣内は、レンタルビデオ屋の女性店員に告白しようとしていた。

その告白に立ち合うべきだと言われて、その現場に連れてこられた長瀬とその恋人、優子。

長瀬は盲目で、常に盲導犬のベスを連れている。

優子は長瀬のことを愛しているが、ベスに嫉妬しているところがある。

その後陣内の告白は失敗に終わり、公園内で色々なことを話して時間が過ぎていった。

だが、ジュースを買いに行った彼は戻ってきてすぐに言った。

「失恋した俺のために、今、この場所は時間が止まっている」

それはまるでトルーマン・カポーティの小説の一説のようだと興奮して言う。

長瀬も優子も半信半疑で耳を傾けるばかりだ。

【チルドレンⅡ】

勤め先の裁判所を出たところで武藤は陣内に飲みに誘われた。

居酒屋「天々」に入り、最初のうちは陣内がやっているバンドの話をしていた。

そのうちに店員の少年がやってきて、陣内にあいさつした。

どうやら少年は、家裁で厄介になっているらしい。

陣内が父親とうまくやっているかと訊くと、とても嫌そうな顔をして悪口を吐き捨てた。

【イン】

長瀬と優子は、駅前のデパートの屋上に来ていた。

ここにやってきたのは、陣内が屋上でアルバイトをしていると聞いたからだ。

ギター演奏が得意な彼のことだから、演奏をしているのではないかと思ってやってきた。

しかし屋上には、親子連れに風船を配るクマやブラスバンドの中学生達しかいない。

どこにも陣内の姿はなかった。

長瀬が一人ベンチで休んでいると、誰かが声をかけてきた。

その声は陣内のものだったが、いつもと違って聞こえる彼の声に違和感を覚える。

【関連リンク】

本『オーデュボンの祈り』

本『チルドレン』

本『魔王』

本『フィッシュストーリー』

本『重力ピエロ』

本『グラスホッパー』

本『陽気なギャングが地球を回す』

本『陽気なギャングの日常と襲撃』


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日常の中に潜む「すこしふしぎ」を陣内が引っ掻きまわします。

この作品を読んだ人たちが「陣内みたいな友人が欲しい!!」とよく書いています。

でも、本当に欲しいですか?

確かにおもしろいキャラですし、物語を読んでいても「すこしふしぎ」を引っ掻きまわす姿も楽しいです。

しかし、友人として付き合うと面倒くさいタイプだと思います。

こういう面倒くさいタイプの人間は、遠く離れたところから見守るのがいいと思います。

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