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漫画『くらしのいずみ』 谷川史子

漫画『くらしのいずみ』 谷川史子(たにかわ ふみこ) 少年画報社 

「結婚は人生の墓場」なんて言わないでください。



1軒目・染井家

「そろそろ結婚しようか」

「うん」

古いけれど彼女の好きな桜の咲く家で、僕らは夫婦を始めたんだ。

僕と妻の吉乃は中1で同じクラスになった。

縁があったのだろう。

高校・大学もいっしょになり、あげく先月結婚をした――24の春。

吉乃は口数も少なく目立たなかったが、僕の両親は彼女をとても気に入ってくれていた。

彼女のたった一人の母親も僕らを祝福してくれた。

そんなふうに穏やかに始まった新婚生活だったが、吉乃について知らないところを僕はいくつも知ることになる。


2軒目・小嶋家

私 小嶋亮子 31歳

夫 義人くん もうすぐ30歳

私の勤務するジムのプールで溺れている彼を助けてから1年後。

私たち結婚してしまいました。

お母さんのようにまめまめしい義人くんは、プラネタリウムで働いています。

そんなある日、彼が働くプラネタリウムの職場で飲み会に呼ばれました。

しかも彼は私のことを「すごく女の子らしくて可愛いひと」と紹介したらしいのです。

全然そんなことないのに……。

どうして見栄はるかなぁ。


3軒目・高橋家

僕・佑一が7つ、姉ちゃんが15の時、両親が事故で亡くなった。

僕らはたった二人の姉弟になった。

姉ちゃんは一生僕が守る……そう決めていたのに。

大学受験を控えている僕は、予備校で姉ちゃんが倒れたと連絡を受ける。

それを聞いてすぐに予備校の先生の車に乗って病院に向かう。

すぐに勘違いだと教えられるが、姉ちゃんのお腹に子どもがいると聞いてさらに驚く。

しかもその相手は僕が通う予備校の先生で、45歳という高年齢だった。


4軒目・矢野家

妻はずいぶん小柄だった。

そのうえショートカットだったので、初めて会った時中学生(しかも男の子)かと思ったものだ。

小さな僕の女の子。

だからってこんな小さな包みに早々とおさまることはないじゃないか。

前から体の弱かった妻は突然倒れ、そのまま帰らぬ人になった。

妻が倒れたとき、いっしょに倒れた花瓶もそのままにしてある。

なぜなら彼女が最後に触れたものだから……。

*3軒目・高橋家に登場する先生の過去のお話


5軒目・島岡家

気を抜いて浮気をしてしまった。

時々うっかり忘れてしまうのだけど、私は人妻なのであった。

しかしそれは紙の上での話なんです。

1年前、中学生の頃から仲の良かった男友達に籍を入れてほしいとお願いした。

お互いに仕事があったし、結婚したかったわけじゃない。

彼は田舎で畑を耕しているし、私は東京で出版社の仕事をしていた。

断られるだろうと思っていた……それなのに彼は婚姻届にサインしてくれた。


6軒目・冬木家

結婚して2年目。

朝起きるといつも妻はいない。

妻の出勤が早いからだ。

テーブルにはメモが1枚。

「今日は遅くなる」とか「傘」とか一言みじかく書いてある。

これも毎朝の風景だ。

「しばらく実家に戻ります すみれ」

携帯電話にかけても、実家に電話をかけても、彼女は出てくれなかった。

何があった、何をやってしまったと考えてみるが……なかなか心当たりが見つからない。


早春のシグナル

その女の子は、僕の婚約者の亜末の高校からの大親友だった。

さんざん自慢された通り、ずいぶん美人で上品そうな子だ。

結婚式のスピーチをお願いすることになったのだが、僕は彼女に嫌われているらしい。

それもかなり。

亜末のいない前ではさんざん悪口を言われ、亜末のいる前では清楚な女性を演じていた。

しかも彼女は、亜末のおでこにキスをする癖があり……。

関連リンク

漫画『手紙』

漫画『他人暮らし』

漫画『谷川史子秀作選 僕らの気持ち』

漫画『谷川史子長編集 きもち満月/くじら日和』

漫画『谷川史子オムニバス集 君と僕の街で』

漫画『忘れられない』

漫画『くらしのいずみ』

漫画『東京マーブルチョコレート ハロー、グッバイ、ハロー』 

漫画『谷川史子純愛読み切り集 H』


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