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少しイカレてるくらいがちょうどいい
『でかい月だな』 水森サトリ 集英社文庫

海岸で月を見るときは、背後を確認してください。



ぼく(沢村幸彦)と友達の綾瀬涼平は、夜の海岸にやってきていた。

夜も遅くなってきていたので、ぼくは帰ろうと促すが、綾瀬は首を縦に振らない。

十三歳、まだ中学生のぼくらだ。

帰りが遅くなれば家族だって心配するのに、綾瀬はまだ帰ろうとしない。

「でかい月だな」

そっぽを向いたまま綾瀬がぽつりと言った。

ぼくもいっしょに夜空を見上げると、そこにはでっかい○が姿を現している。

月を見ながら考え事をしていると、胸に衝撃を感じ、身体が宙に舞った。

ぼくを混乱と哀しみに突き落とし、あいつは町から消えてしまった――。


三日間ほどの記憶がない。

目が覚めたとき、そこは病院のベッドの上だった。

あの夜、ぼくは崖から蹴り落とされて、崖を転げ落ちた。

そして右足が金属のガラクタに突き刺さり、転落が止まったらしい。

何時間にも及ぶ手術によって命は現世に、右足は身体に繋ぎ留められた。

だが、ぼくは大好きなバスケができない身体になってしまう。

「どうして蹴ったのかわからない」

綾瀬涼平は、そう供述したという。

ぼくの病室には、たくさんの見舞客がきた。

そして口々に綾瀬の悪口を言って帰っていく。

だがぼくは、綾瀬のことを庇う発言しかしなかった。

二度目の手術やリハビリなどで一年が経った。

以前の同級生は、三年生に進級している。

ぼくは、一年遅れの二年生として学校に通い始めた。

平凡で平和な毎日をおくっている。

だが退院してからぼくは夢を見るようになった。

やつらのやってくる悪夢だ。

そんな時、ぼくの目の前に現れた天才科学少年の中川と邪気眼少女のかごめ。

そしてぼくの周囲で奇妙で不可解な現象が起こり始める……。

第十九回小説すばる新人賞受賞作

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