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昔話『月と花火と私の失敗』2

前回のあらすじ

君がいた夏は 遠い夢の中

空に消えていった 打ち上げ花火

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校門前で×××を待っていると、目の前を家族連れや若い男女が通っていきました。

幼い子どもも若い女性もきれいな浴衣を着ていました。

知っていますか?

浴衣は胸が慎ましい人にこそ似合う衣装なのです。

かといって、胸の大きな人の浴衣姿を否定しているわけではないのです。

浴衣姿の女性はそれだけで素敵だと思います。

それからすぐに×××がやってきました。

私「……( ゚д゚ ) 」

×「なに?」

×××は、毎日のように長袖の服を着ています。

それは春夏秋冬、長袖の服しか着ないということを意味しています。

彼女は日本の四季を服装で楽しむことを拒否しているのです、

もちろんその理由はリストカット痕を隠すためですが。

私は四季を楽しむことも好きですが、オールシーズン見られるイカレた傷痕も悪くないと思っています。

むしろ良いです。

そんな彼女が、なんと、夏らしい浴衣を着ているのです。

普段から暑苦しい姿しか見たことがないものですから、その涼しそうな姿に少しばかり見惚れてしまいました。

しかもちょっと可愛いと思ってしまう自分が憎いです。

今でこそ「ギャップ萌え」という言葉が流行語大賞を取る世の中ですが、当時は「萌え」という言葉すら知られていません。

今思えば「萌え」の片鱗を彼女の浴衣姿から感じ取っていたのかもしれません。

そんな私は「イカレた女の子萌え」です♪

むしろ単純な好みですか?

それから「ギャップ萌え」という言葉は、流行語大賞を取っていませんから。

夏休み明けに友達に自慢しようと思っていた学生のみなさん、残念でしたね。

まあ、そんなことはどうでもいいのです(・∀・)キニシナイ♪

私「へぇ……はぁ……ほぉ……」

×「……」

私はラマーズ法に次ぐ新たな呼吸法を試みていました。

人は本当にキレイな物を目の前にすると、言葉で説明できないのかもしれません。

けれど勘違いしてはいけません。

私は×××の浴衣姿にだけ見惚れているわけではありません。

浴衣の袖から覗かせる白い腕と赤い傷にも見惚れているのです。

青い浴衣、白い腕、赤い傷――何とも言えない風情があると思いませんか?

そろそろ夏の風物詩の一つとして挙げられてもおかしくないと思うのですよ。

しかし見惚れているばかりではいけません。

Rは言いました。

「女に見惚れたら言葉にして褒めてあげないとダメだよ。それが女に対しての礼儀だ」

女を惹きつける才能を持つソース焼きそば顔の少年は言うことが違います。

私もその言葉に従って×××を褒めようと思います。

私「えっと、うん。その……綺麗だね」

×「へぇ」

私「なに?」

×「別に」

×××はニヤニヤと笑みを浮かべて私を見ています。

どこか誇らしげに見えるのは気のせいでしょうか。

いつも彼女の傷痕を褒める時は罵倒してくるのに、今回は罵倒されませんでした。

私「私も浴衣着てきた方がよかったかな」

×「持ってるの?」

私「持ってない」

×「なら言うな」

はい、申し訳ございません。

私と×××はゆっくり歩いてお祭り会場に向かいます。

お祭りは、神社の参道から商店街まで続いています。

商店街前の道路は、歩行者天国になっているので安心して回ることができます。

普段は仕事もしない警察官たちが、今日は忙しそうに交通整理をしています。

それでも歩行者の波や車の流れには気をつけなければいけません。

いくつかの屋台ではヤクザが商売しているので、そちらも気をつけなければいけません。

×「ちょっと早い」

私「あ、ごめん」

いつの間にか歩みを速めてしまっていました。

私はまた彼女の隣に立って歩きます。

×××はきょろきょろと祭りの屋台を見ています。

耳に聞こえる祭囃子と目に写る温かな提灯の光は、祭りに来たなぁと実感がわきます。

祭りの雰囲気を味わっていると、目の前から歩行者の波が押し寄せてきました。

私は×××の前に立って歩くようにします。

なかなか止まない波に翻弄されながらも前に進み続けます。

私「何か食べようか」

×「たこ焼き」

私「いいね」

×「おごりで」

私「やだよ」

×「ケチ。ケーチ!」

彼女は少しだけ笑いました。

私も少しだけ笑いました。

この世界から笑えない子どもがいなくなりますように。

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