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少しイカレてるくらいがちょうどいい
『棘まで美し』 武者小路実篤 新潮文庫

薔薇は棘まで美しい。

そして人間も欠点まで美しい人がいる――。



僕が散歩していると一人の青年が画をかいていた。

元来僕は画家なので、彼が何をかいているのかと気になったので見にいった。

自分はその画を見て驚いた。

それは僕の死んだ友達の画に似ていた。

彼は竹谷次郎といい、やはり死んだ友の息子だった。

現在は母一人子一人で暮らしており、貧しい生活を送っているという。

友は、女のことで自殺してしまったことを知らされた。

彼の母親は、息子も女が原因で死んでしまうのではないかと心配しているらしい。

それから僕は自分のアテリエに呼んでやったり金を工面してやったりと気にかけた。

そんなある日、遠い親戚から娘を上京させて学校に通わせたいから僕のところへ預けたいという依頼をうけた。

僕も妻も娘もそれを快く引き受けた。

そしてやってきたのは吉村貞子という美しい女だった。

吉村は快活な女で、僕の娘などとはちがって男の人と話をするのも平気だった。

僕のアテリエでモデルになることもあり、若い連中といっしょに画をかくようにもなった。

その中には竹谷もいたが、彼は話に入ろうとしなかったし、吉村の画を酷評した。

吉村は竹谷のことは嫌っていたが、彼の画のすごさは認めていた。

しかし彼女は竹谷の画よりも山根の描く画に惹かれていた。

竹谷は山根をライバルとして意識していたが、山根は競走馬ではないと気にしていなかった。

美しい棘をもった美少女、吉村貞子と彼女に心をよせる対照的な二人の青年。

気むずかしく孤独で貧しいが、天賦の才能溢れる竹谷。

紳士で金持でもあり、画家として腕のすぐれた山根。

彼らの清らかな恋愛と友情、ひたむきな芸術への愛を、人間の棘―欠点―までも深く愛した作者が独特の善意で描いた抒情小説。

本『愛と死』 武者小路実篤

本『友情』 武者小路実篤

本『棘まで美し』 武者小路実篤

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