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昔話『ネコ耳メイドとSF執事、そして安楽死探偵』10

前回のあらすじ

ポッキーゲームをやる前と後に「江崎グリコ万歳」をつけろ。

開発者に敬意を払え、リア充共。

むしろ爆ぜろ。



私「……」

SF「どうしました。嬉しすぎて言葉にできませんか?」

私「……」

SF「先輩?」

言葉はおろか、ため息すら出ませんでした。

どうやら私は後輩に期待し過ぎていたようです。

私「お前はできる子だと思ったんだけどなぁ」

SF「どういう意味っすか?」

私「期待ハズレ」

SF「……」

大体なんですか、百円払って出てきたのがポッキーって。

ふざけてるんですか?

体育館裏や保健室でイタズラしてもいいですか?

いえ、勘違いしないでくださいね。

ポッキーは好きですよ?

色々な種類がありますし、とても美味しいお菓子だと思います。

大好きです、江崎グリコ!!

しかし、このような場所で食べられるポッキーの使用用途なんて一つに決まっています。

私「ポッキーゲームなんて発想が陳腐すぎるよ」
「そういう遊びは合コン好きなリア充やラブコメってるカップルがやってればいいんだよチクショウ!」

少し感情に任せて言いすぎたかもしれませんが、言ってしまったものは仕方ないですよね。

ちょっぴり罪悪感を覚えながらも私はコーヒーを飲みました。

SF「ふっ。私もなめられたものですね」

私「っ!?」

SF「そこらへんのアホ学生でも考えられる遊びを私が用意する訳ないでしょう」

私「むぅ」

SF「というか嫌いなんすよ、ああいう遊び。いかにも頭悪い奴がやりそうだから」

後輩の目が一段と鋭くなりました。

女王様が豚を侮蔑するような目つきと言えば分かりやすいでしょうか。

もしくは脳味噌ド腐れビッチを見るような目つきです。

私「じゃあこのポッキーはそのまま食べるの?」

ポッキーゲームで食べるのではないとしたらそれ以外ないと思います。

しかしそれではわざわざ裏メニューにする必要はありませんよね。

グラスにあるポッキーは7本ですが、普通に食べるだけなのに百円払わされてしまってはボッタクリもいいところです。

百円払うならもう一袋分のポッキーも欲しいところです。

そんなポッキーごときで怒るなんて器の小さい方ですね、と思った方は両手を挙げましょうか。

それから――。












江崎グリコで働く方々に謝ってください!!

ポッキー本当に美味しいんですからね!!

もちろんプリッツも大好きですよ!!

個人的な怒りは表に出さず、露骨にお菓子メーカーの宣伝塔をこなすのが120%CRAAZYの役割です。

まあ、嘘ですけどね。

SF「違います。先輩も発想が貧弱ですね」

私「さっきはすみませんでした。本当のことを教えてください」

私は自分の過ちを認めて、素直に謝りました。

後輩は鋭い目つきを和らげて言いました。

SF「仕方ないっすねぇ。じゃあポッキーを手に取ってください」

私「はーい」

言われたとおり、私はグラスに入ったポッキーを一本手に取ります。

SF「じゃあ妹は口を開けて」

妹「え、にゃんで?」

姉の言いつけを忠実に守っているところが可愛いです。

SF「いいから」

妹「うん……」

SF「じゃあ先輩はそのポッキーを妹の口に突っ込んでください」

私「そぉい!!」

かけ声とともに勢いよく偽妹ちゃんの口にポッキーを突っ込みました。

卑猥な光景のできあがりです。

妹「んっ!?」

ポキッ

彼女はすぐに口を閉じて侵入してくる棒状のものをシャットアウトします。

私の手元には半分ほどになったポッキーが残されました。

SF「これがオプションサービスでございます(・∀・)ニマニマ」

後輩はニマニマと笑みを浮かべています。

私「これはおもしろい(・∀・)ニヤニヤ」

私は初めて体験する遊びに目を輝かせます。

妹「何するんですか!」

偽妹ちゃんは耳を真っ赤にして抗議してきます。

普段ならここで謝ってしまう気弱な私ですが、今日は違います。

私「ご主人様でしょ?」

妹「え……あ……やめてください、ご主人様にゃん」

私「だめ♪」

私は残ったポッキーを偽妹ちゃんの口元に持っていきます。

彼女はそれを拒んで顔を背けますが、そこに後輩の忠告が入ります。

SF「ご主人様の命令は絶対☆」

仮初の王様の命令が絶対のように、仮初のご主人様の命令も絶対なのです。

その言葉を聞いた偽妹ちゃんは観念したように私の方に顔を向けます。

あまりによく調教された猫耳メイドなので感心してしまいました。

私「あーん」

妹「……」

私「あーん」

妹「…………にゃーん」

今度は優しくそっと口にポッキーを入れてあげます。

ポキ ポキ ポッキー ポキッ ポッキー ポキッ

偽妹ちゃんの口がチョコレートのかかってない部分にまでやってきました。

するとそこで彼女の口の動きが止まりました。

どうしましょう。

このままでは私の指が彼女の唇に触れてしまいます。

ああでも、触れたくないわけではないのですよ。

むしろ触れたいです。

いつぞやの「ドウゲン坂でむにゅっ」よろしく「メイド喫茶でふにっ」というのも良いと思います。

あの時は偶然触れてしまいました。

しかし今回は偶然ではなく意図して触れてしまうことになります。

偶然を装うならまだしも、意図して女の子の身体に触れてしまったら、それはただの変態です。

公共交通機関で意図して異性の身体を触れる人を痴漢と言うのと同じですよ。

ストップ! 痴漢行為!!

私はキチガイですが、変態にジョブチェンジする気はありません。

ましてや痴漢に成り下がる気は毛頭ありません。

私(ジョブチェンジできるのは教会だっけ……あれは死者蘇生させる場合か)

自慢げにRPGの常識を披露しましたが、ドラクエもFFもやったことがない私です。

私は少し考えてからポッキーから指を離しました。

偽妹ちゃんはそれを見てから残っていたポッキーを口に入れました。

友「……」

SF「……」

き「……」

私「……」

妹「……」




















超楽しい!!
















何ですかこれ。

何なんですかこれ。

超楽しいじゃないですか。

ヤバイです。

色々ヤバイです。

今の気持ちを表現する言葉が見つかりませんよ。

こんなことになる前にもっと本を読んでおくべきでしたね。

私自身の語彙力のなさに絶望しました。

しかし今なら水泳の北島康介選手の気持ちが分かります。

私(気持いい! 超気持ちいい!)

しかしオリンピックで金メダルを取ることに比べたら年下の猫耳メイドにポッキーを食べさせる行為なんて……いえ比べられません!

だって私、金メダルなんて取ったことないですし。

そもそもオリンピックに出たことないですからね。

だったら比べるなんてできるわけないですよー。

いつかオリンピックに出ることを夢見て、私は二本目のポッキーを手に取りました。

私「あーん」

妹「にゃーん」

私(かわいい♪ 超かわいい♪)

先ほどから周囲の視線がヤバイです。

何より友人たちの白い目がヤバイです。

私「これ犯罪じゃないよね?」

私は偽妹ちゃんにポッキーを食べさせながら周囲の誰かに尋ねます。

世の中には、ベッドの上で血のつながった妹に歯磨きプレイをする変態なおにいちゃんがいるそうです。

その点私は大丈夫です。

高校のメイド喫茶で血のつながらない妹にポッキープレイをするイカレたおにいちゃんですから。

ええ、どこも変態な要素はありませんね。

SF「大丈夫です。裁判になったら証言台に立ってあげますよ。検察側として」

私「むしろお前が裁かれろ。高校生のくせにやばい商売するなよ」

SF「えー、わたし馬鹿だからわかんなーい」

私(最近の女子高生の発想はこわい)

私は三本目のポッキーを手に取りました。

私「あーん」

妹「にゃーん」

私(お持ち帰りしてぇ)

ポキッ ポキッ ポッキー ポキッ ポッキー ポキッ ポキッ ポキッ ポッキー

偽妹ちゃんが耳を真っ赤にしながらポッキーを食べる様は色々感じるものがあります。

しかしそれ以上に友人たちの冷たい視線を浴びると色々考えるものがあります。

私「きーちゃん……」

き「なに、すーくん」

私「私たち、友達だよね?」

き「…………」

私「なんで無言なの!?」

友「安心しろ、××××」

私「おお、心の友よ」

今なら映画に出てくるジャイアンの気持ちが分かります。

やりましたよ皆さん。

ついに私は“次元を超えた共感”という偉業を達成しましたよ。

ちなみに私は大山のぶ代さんの声のドラえもんが好きです。

でもデーモン小暮閣下の声のドラえもんも好きです。

「ふははは、我が名はドラえもんである」とか言っちゃうんですよ、きっと。

まあ、存在しませんけどね。

“もしもボックス”があったら使ってみたいものです。

もしくは“ソノウソホント”とか“ウソ800”で。

友「俺たちは……友達だった」

私「友……お前もか」

時を経てカエサルの気持ちも分かってしまいました。

私の本名をフルネームで呼ぶあたりからおかしいと思ってたんですよ。

心で嘘泣きしながら私は四本目のポッキーを手に取りました。

そしてグラスを友に渡します。

友は渋い顔をして受け取り拒否しますが、隣のきーちゃんがポッキーを二本取りました。

き「友くんあーん」

友「え?」

き「あーん」

友「ちょ……」

友は少し考えてから黙って口を開けました。

それから口に入れられたポッキーを食べ始めます。

き「すーくんは友達じゃなくて親友だよ」

私「きーちゃん、ありがとう」

気を取り直して猫耳メイドの餌付けに戻ります。

私「あーん」

妹「にゃーん」

私「……」

妹「にゃーん」

ただ餌を与えるだけではつまらないので芸をさせましょう。

私「何が欲しいの?」

妹「ポッキーですにゃん」

私「じゃあおねだりしてみようか」

妹「……ポッキーくださいにゃん」

目がとろーんとした偽妹ちゃんが可愛くおねだりしています。

胸の奥がゾクゾクしました。

私は踏み込んではいけない領域に足を入れかけているのではないかと不安になりました。

私「うーん、もうちょいがんばって」

少し意地悪してみたくなりました。

すると偽妹ちゃんは困った顔をして考え始めます。

ポキッ ポキッ ポッキー ポキッ ポッキーン

SF「妹。そんなの簡単だよ」

後輩は偽妹ちゃんの耳元で何やら囁きました。

まあそれはいいのですが、問題はその手に持っている物です。

私「ちょっと待て。お前は何を持っている」

SF「プリッツです」

私「ポッキーだよ!」

SF「だって似てるじゃないすか」

私「謝れ。江崎グリコに謝れ!」

焼きそばと焼きサバを間違えるのとは訳が違います。

私と後輩がポッキーとプリッツについて論争を繰り広げていると、偽妹ちゃんが恥ずかしそうに口を開きます。




















妹「私のお口に……ご主人様の、ポッキーを……入れてください……お願いしますにゃん」



















知らぬ間に私は踏み込んではいけない領域に足を踏み入れていたようです。

ポッキーン

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