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昔話『ネコ耳メイドとSF執事、そして安楽死探偵』9

前回のあらすじ

もしもこの現実が空想の世界だったら――。

後輩:SF執事

偽妹ちゃん:猫耳メイド

私:モブキャラ

きーちゃん:愛の伝道師

友くん:名前を言ってはいけないあの人

ドラえもん:未来からの蒼き使者

偽者だらけのこの物語に、本物はいるのでしょうか。






後輩が100円玉を握りしめてカーテンの向こう側に消えました。

今度のオプションサービスは何なのでしょう。

猫耳 + メイド

すでに完成された萌えにプラスしても大丈夫なものは何があるでしょう。

偽妹ちゃんを見ながら新たな可能性を考えます。

私(少し真面目さを入れるなら眼鏡……?)

やはり萌えに関して疎い私ですから、その程度の貧弱な発想しかできませんでした。

もしくはメイド服を脱ぎ捨てて、スクール水着というロリコンさんが喜びそうなものもありですね。

しかし私はロリコンではありません。
   
確かに偽妹ちゃんのスク水姿は見てみたいですが、ここはメイド喫茶ですから不釣り合いです。

だから却下です。

根本的な問題はそこではない、と警察の方に取り調べ室で言われてしまいそうですね。

どうか日本の警察の不祥事が減少しますように。

どんな衣装でも似合いそうな偽妹ちゃんが心配そうに問いかけてきます。

妹「どうかしました?」

私「ううん。何でもない」

妹「そうですか。あの……」

私「コーヒーおかわりもらってもいい?」

妹「あ、はい! ありがとうございます」

偽妹ちゃんが何か聞きたそうな素振りを見せましたが、インスタントコーヒーを注文して話をそらします。

カーテンの向こう側に向かう彼女の後姿を眺めながらホッと一息つきました。

しかし安心したのもつかの間、きーちゃんが別のことを考える余裕を与えないために話題を滑り込ませてきます。

き「すーくんはもう少し責任という言葉の意味を考えた方がいいと思うよ?」

私「責任ですか?」

き「責任です。友くんもそう思うよね?」

友「え、あー、そうだな」

私「責任を取るべき時が来たら考るよ」

き「もう、その時じゃ遅いの!」

私(きーちゃんは可愛いなぁ)

そこに偽妹ちゃんがコーヒーのおかわりを持って戻ってきました。

こぼさないように気をつけてゆっくり歩いてきます。

お盆を持つ細い腕がぷるぷると震えていて少し心配になります。

妹「お待たせしました、おにいちゃん」

私「ありがとう」

偽妹ちゃんの笑顔に私も愛想笑いで応えます。

私がコーヒーを飲もうとしたらきーちゃんから停止命令が下りました。

き「ダメだよ」

私「え、何が?」

何のことを言っているのか分かりませんでした。

コーヒーにミルクも砂糖も入れないことでしょうか。

それとも私が生きていることでしょうか。

それに関しては私も常々思っています。

本当にどうしてまだ生きているのでしょうね。

やっぱりこの学校の思い出作りのためにも屋上に行きますか。

冷たい校舎の時は止まりませんが、私の過ごしてきた無駄な人生はここで止まります。

き「妹ちゃんはメイドなんだから、すーくんのことはご主人様って呼ばないと」

妹「あ……」

き「それから、今は猫耳メイドなんだから語尾に必ずにゃんてつけること!」

妹「……」

偽妹ちゃんは黙ってしまいました。

今日のきーちゃんはSSですね。

私(すこし・さでぃすと)

もしくは、口でクソ垂れる前と後にサーをつけろと強制する鬼軍曹のようです。

自称ドSの私も今日はそれを見習いたいと思います。

今日からブログを見る前と後に『ヒーヒーフー』をつけてください。

これで少しは生まれてきた喜びを実感できるといいですね、みなさん。

しかし、とある子持ち女性に「ラマーズ法? そんな呼吸してる余裕ないから実際」と聞いたことがあります。

まあ、理想と現実はだいぶ違いますからね。

楽でも苦でも死ねるなら何でもいいというのが私の理想ですが、自殺することも他殺されることも許されていないというのが現実です。

妹「わかりましたにゃん」

き「よろしい!」

微笑ましい姉妹愛です。

私の先輩がこの光景を見たら狂喜乱舞してしまうことでしょう。

私は携帯電話のカメラ機能で撮影保存販売しようかと思いました。

おそらく販売の後に来る漢字は逮捕だと思います。

葬儀屋さんに厄介になるのはかまいませんが、警察にはできることなら関わりたくないです。

SF「お待たせいたしました」

私「ま、まだ何もしてないんだからね!」

SF「何言ってんすか?」

私「あ……」

突然の背後からの声に自分のキャラを見失いかけましたが、後輩の姿を見て、自分の本来のキャラを取り戻しました。

そうです。

私にツンデレキャラも天然キャラも似合いません。

だって私はモブキャラですから!

私「それでオプションサービスって?」

SF「これです」

後輩は手に持っていたグラスを差し出します。

私「これって……」

私はグラスに入ったそれを凝視します。





















次回予告「あなたもわたしもポッキー」

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