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『少女ノイズ』 三雲岳人 光文社文庫



欠落した記憶を抱え、殺人現場の写真を撮ることに執着する青年・高須賀克志。

心を閉ざして、理想的な優等生を演じ続ける孤独な少女・斎宮瞑。

進学塾の屋上で出会った二人が見つめる恐ろしくも哀しい事件の真実とは――。



Ⅰ Crumbling Sky

少年は数人の同級生とともに、学校の代表としてセレモニーに参加していた。

前に立っている男のせいで肝心の彫像が見えないことが不満だ。

少しでも彫像の見える場所に移ろうと、少年が静かに足の位置をずらした。

目の前の男の大きな背中が、ぐらり、と揺れたのはその直後だった。

見上げた男の太い首が、不自然な形に曲がって痙攣していた。

何かがぶつかったのだと思い、頭上を見上げた。

しかしそこには、ただ青い空だけが広がっている。

事の発端は皆瀬梨夏だった。

あの日、彼女が僕に声をかけてこなければ、あの事件を思い出すことはなかっただろうから。

大学の特任准教授・皆瀬梨夏は、進学塾のアルバイトを紹介してきた。

お金が必要だった僕は、そのアルバイトを受けることにする。

僕が担当する塾生は、斎宮瞑(いつきのみや めい)という高校二年生の女の子だった。

しかし僕の仕事は、彼女に勉強を教えることではなく、彼女を監督し世話することだった。

瞑は一度も授業に出席することがなく、いつも塾内をうろついているらしい。

僕は塾内を歩き回り、彼女がよくいるという立ち入り禁止の屋上に赴く。

するとそこには、両脚を無造作に投げ出した姿で、セーラー服の少女が座っていた。


Ⅱ 四番目の色が散る前に

その夜、僕は廃業したレストランの跡地を訪れていた。

川沿いの国道脇にあるファミレスだった。

人を寄せ付けない結界のような廃墟。

そこは理想的な場所だった。

殺人者にとっての最高の狩猟場。

この廃墟で、女子高生の変死体が発見されたのは四日前のことだ。

僕はファインダーを覗きこんだ状態でシャッターを切る。

青白く発酵したフラッシュが高校の制服を着た少女を照らした。

その子は僕に向かって「先生?」と問いかけた。

それが彼女――納戸愛美との出会い。

第一の犠牲者、笹沼茜が殺されて四日目の夜のことだった。

そのことを瞑に話すと、どういうわけか彼女は冷ややかな目でこちらを見てきた。

そして笹沼茜が殺害された事件についても話す。

笹沼茜はヒモのようなものを使って絞殺され、右腕を切断されていた。

瞑はそれを聞いて「ABC、でなければいいけど……」と呟いた。


Ⅲ Fallen Angel Falls

虚空に近い場所に彼女はいた。

彼女の背後にはなにもなかった。

高層ビルの屋上の端。

鉄柵を乗り越えた向こう側が、彼女の立っている場所だった。

小柄で儚げな雰囲気の女子高生だ。

僕の存在に気づいた彼女は少し驚いたが、僕の素生を聞いて納得していた。

自殺を止めるでもなく促すような発言をしたというのに、斎宮瞑の講師であるというだけで。

浦澤華菜。

制服の袖口からのぞく白い腕には、一筋の傷痕が残されていた。

それから何週間か経ったある日、塾講師が集まる談話室で雑談をしていた。

話題にあがったのは何日か前に起こった駅の事故である。

駅のホームの階段から女子高生が転落し、軽い怪我をしてしまったという。

被害者は塾の生徒で、ただの事故ではなく、何者かに突き落とされた事件ではないかとも言われている。

その転落事故の被害者というのが浦澤華菜だった。

彼女はそれだけでなく、塾でも出血する傷を負ってしまう事故に遭う。

彼女は自身のことを「呪われている」と称した。

僕がその子のことを瞑に話すと、興味がなさそうなふりをして不機嫌になっていた。


Ⅳ あなたを見ている

「幽霊――だったんです」

躊躇いがちに何度も視線を泳がせた後、森澤恵里はそう告白した。

そして僕の反応を待つように沈黙した。

塾の進路相談室だった。

担任講師に勧められて僕のもとにやってきた彼女は、すがるような気持ちで詳しい話をする。

森澤恵里は、ずっと以前から、一人の男につきまとわれていたのだという。

中学生の頃か、もしかしたらその前から。

彼女が物心ついたときにはすでに、その男は恵里の周りに出没していたらしい。

見知らぬ男だったという。

彼が彼女に要求してくることはなく、ただ見つめられたりあとを尾けられたりというだけだった。

しかし今年の夏ごろには家の周辺に出没するようになり、ついには家に上がり込んでいたという。

恐怖のあまり、彼女は咄嗟に近くにあった小刀で男を刺していた。

やがて男の腹から赤い血が出始め、事の重大さに気付いた彼女は部屋に閉じこもった。

ようやく気持ちが落ち着いた頃、男の死体のことやそろそろ帰宅する母親のことが気にかかり、部屋を出た。

男を刺した部屋に戻ってみると、そこには死体はおろか、すべての痕跡がなかった。


Ⅴ 静かな密室

燃え盛る炎の中で、僕はごく自然に死を覚悟した。

あまりにも呆気なさ過ぎて実感が湧かない。

心残りなのは、ひとつだけだ。

できることなら、もう一度だけ会って話がしたかった。

あの雪の日にいなくなってしまった彼女に。

瞑……

目が覚めると病院のベッドの上だった。

最初に病室を訪れたのは警察関係者で、事故原因を知るために僕の元を訪れたのだという。

しかし実際は違っていた。

名上遥香を殺した最有力の容疑者として僕は挙がっていた。

僕が容疑を晴らすことができず困っていると、乱暴にドアが開けられ、病室にかけこんでくる影が一つ――。

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無題
こんにちは。

三雲さんの本結構好きなので、
今度探してみますねー☆☆
ひいち 2012/04/07(Sat)15:03:24 編集
無題
こんばんは。

最後のお話以外はどれもおもしろいのでオススメです!
高須賀克志(通称スカ)が遭遇したり聞いたりした事件や珍事の概要を塾の屋上にいる瞑に伝え、得られた情報から解決するというのが物語の基本の流れです。
three 2012/04/07(Sat)20:38:10 編集
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