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昔話『Under The Smile』6

前回のあらすじ

精神崩壊二度目のお知らせ?








その日、私は学校を早退しました。

学校をサボタージュしてやってきたのは裏通りでした。

アブナイ アブナイ ウラドオリ~♪

そこにやってきた目的は一つしかありません。

目の前にある扉には「close」の札がかかっています。

私はそれを無視して勢いよく扉を開けます。

薄暗い空間の中には一人の男性が立っていました。

マ「いらっしゃい」

今日も今日とてマスターは営業スマイルを崩しません。

私も愛想笑いは得意ですが、今日ばかりは引っ込めています。

マ「それより学校はどうしたの?」

私「……」

マ「あ、わかった。リンに会いに来たんだね。最近会っていなくて寂しがってたよー」

私「……」

私はリンさんに会いに来たわけではありません。

それよりも聞かなければいけないことがあったからです。

私「どうして話したんですか?」

マ「え?」

私「どうして話したんだよ!」

マ「……」

マスターの顔から笑顔が消えました。

私の顔は……説明しなくてもわかりますね。

Tは私に言いました。

「よくも騙してたな」

確かに私は彼らを騙していました。

あのことがきっかけで私は人を信じられなくなりました。

家族も教師もクラスメイトも誰も彼も信じられないのです。

そこには親友であるTとRも含まれます。

私はそれを隠してTとRと付き合っていましたし、そのことを話さなくていいと思っていました。

お前らのことは信用していないけど親友だからな☆

そんなことを言えるわけもありませんし。

けれど、そのことを二人に話してしまった人物がいます。

私「マスター。話さないように言いましたよね」

マ「ごめん」

私「なんで話すんですか……」

怒りではない別の感情が生まれ始めました。

私は頭を抱えてこれからどうすべきか考えます。

マ「酒に酔った勢いでつい……すみませんでした」

私「貸しですよ」

マ「エ?」

私「今度何かあったら私のために働いてください」

これからどうすべきか考えた末、私はマスターを使うという考えに至りました。

使えるものは全て使いましょう、人も物も金も時も。

まあ、今はまだマスターを使う時ではありません。

使える時がきたら必ず使います。

それまでは私の使える駒として残しておきましょうか。

マ「えーと、それはいいんだけど……」

私「何ですか?」

マ「あいつらとの関係はどうするつもり?」

私「修復しますよ!」

誰のせいでこんなことになったと思っているのでしょう。

マスターの顔を見ていたら怒りが再燃し始めました。

この怒りを拳に乗せて殴りたい気持ちでいっぱいになります。

私「やることが決まったので……帰ります」

実行したい気持ちはいっぱいありましたが、実行すべき場所はここではありません。

マ「あ、ちょっと。リンに会いに行ってあげなよ」

外に出ようとした私の背に声がかけられました。

確かに最近は彼女と会うことも話すこともしていませんでした。

毎日のように殴られているから体が痛くて仕方ないのです。

だから、裏通りには寄らずに家に帰って眠ってしまっていました。

私(会いたいなぁ……リンさん)

しかし彼女に会うよりも先にすべきことが私にはありました。


放課後、私は学校に戻ってきました。

帰っていく生徒達の横を通り過ぎて玄関の方に向かいます。

彼らは傘をくるくる回して嬉しそうな顔をしています。

久しぶりの晴れ模様だからでしょう。

私は玄関で靴を履き替えて自分のクラスに向かいました。

そして――。

私「ヘロー」

私は二人に挨拶しました。

一人は、私の存在に気づいてからすぐに気づいていないふりをしました。

もう一人は、私の存在に気づいてからすぐに驚いた表情を見せました。

仲直り作戦の第一段階はこんなものでしょう。

さて、それでは大事な大事な第二段階に移りましょう。

私は仏頂面の男のところまで歩いていきました。

そして――思い切り殴りました。

言葉による平和的解決?

そんなものは放棄します。












T「イッテェ!! 何すんだてめぇ!!」












私はすぐさま逃げました。

第二段階は完了です。

それでは第三段階に移行します。

教室を出てからすぐに転がるように階段を下りていきます。

階段の踊り場の辺りまで来ると、後ろから鬼のような形相をしたTが追いかけてくるのが分かりました。

過去を振り返ってばかりの私ですが、今日ばかりは後ろを振り返らずに前だけを向いて走ります。













だって怖いから!














振り向けば鬼が追いかけてきます。

これこそリアル鬼ごっこというものです。

いえ、違います。

私の名前は××××です。

サトウやスズキといったありきたりな名前ではありません。

それから私は全国のサトウさんとスズキさんに平謝りしながら走ります。

徐々に鬼との距離が縮まっているのがなんとなく分かりました。

圧倒的な身体能力という才能を持つTですから。

ちなみに私の才能はイカレた人を惹きつける才能です。

きらり~ん☆

しかし、このままでは私自身がお星様になりかねません。

早く人間になりたーい……じゃなかった。

早く最終段階に移りたーい。

走っていくうちにようやく最終段階に移行できる場所までやってきました。

これより最終段階を始めます。

私は前方に向かおうとしていた勢いを殺さず、遠心力を加えて後方を振り返りました。

そしてこちらに向かってくるTに右ストレートを放ちます。

タイミングはバッチリでした。

スピードも申し分なかったです。

しかし、圧倒的に才能が足りなかったです。

勢いよく走ってきたTは、私の右拳をすり抜けます。

そして私の懐に入り込み、肝臓に重いパンチを叩きこみました。

私はその場に倒れ、Tは笑って言いました。












T「バカ。俺に喧嘩で勝てるわけないだろ」














仲直り作戦完了です。

遅れてやってきたRは、私を立ち上がらせてくれました。

R「後で詳しく聞かせてよ」

彼は最初から私のことを信じてくれていたようです。

ソース焼きそばみたいな色をした顔でにっこり笑いました。

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