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本『檸檬のころ』 豊島ミホ

『檸檬のころ』 豊島ミホ 幻冬舎文庫



山と田んぼに囲まれた田舎の高校を舞台に、「あの頃」のかっこ悪くて、情けなくて、でもかけがえのない瞬間をせつないまでに瑞々しく綴る。


【タンポポのわたげみたいだね】

高校三年生になってから橘ゆみ子は保健室を訪れるようになった。

それはうちの「お姫様」の小嶋智(サト)がベッドで眠っているからだ。

でも橘が授業に行こうと誘ってもいっしょに来ないことが多い。

いつからこうなってしまったんだろう?

最初は仲が良かったのに、今はサトの考えていることがわからなくなってきた。

ある日、橘は同じ学年のカッコいい男の子に声をかけられる。

翌日から彼女は彼といっしょの電車に乗ることを約束する。

今まで彼女の隣はサトの席だったが、これからは……。


【金子商店の夏】

金子晋平、二十八歳――資格試験予備校生。

新宿にある資格試験予備校に通う彼は、司法試験に五回落ちていた。

年下の同級生にはバカにされ、嫁に行った妹には大人になれと言われている現在。

そんな時に一本の電話がかかってきた。

実家の母親からで「おじいちゃんが死にそうなの」と言われた。

地元に戻ってきた晋平は、高校の横の細い道を駆ける。

そして見えてきた「金子商店の看板」

すぐに家に入ると、じいさんは元気で、母さんはどこか他人行儀だった。

言いたいことはわかっている、「店を継げ」と言うのだろう。


【ルパンとレモン】

野球部の西は、吹奏楽部の指揮者だった秋元にテーマを聞かれる。

一瞬何かわからなかったが、テーマ曲だとすぐに気づく。

何でもいいという西に、秋元は「西はクールだからルパンにする」と言う。

それから西と秋元は放課後にいっしょに勉強するようになり、いっしょの高校に受かった。

それで、高校三年の夏。

どこで間違ったんだろう。

その頃には、秋元は西ではなく、佐々木という野球部員と仲が良くなっていた。


【ジュリエット・スター】

うちは高校生専門の下宿をしている。

主に母が切り盛りしていて、理可は本屋でバイトをしながらたまに手伝いをする。

大変じゃないかと言われるが、それほどでもない。

ただ、高校二年の水橋珠紀には手を焼かされる。

下宿内恋愛を禁止されているこの場所で彼女は、林と言う男子生徒と付き合っているのだ。

今までに下宿内の男子と女子が仲良くなるなんてことなかったけれど、珠紀だけは違った。


【ラブソング】

MDウォークマンで音楽を再生して、白田は喧騒に満ちた教室から切り離される。

私は中三で音楽シナリオライターになると決め、それからずっと音楽の勉強をしている。

その日も音楽雑誌を読んでいた。

すると、それを覗き込む男子の辻本がいた。

白田は少し惹かれるが、夢のためには男子に気を取られているわけにはいかないと自分の気持ちを否定する。

だが軽音部の辻本くんと音楽シナリオライターを目指す白田。

偶然二人は話をすることになり……。


【担任稼業】

丹波は自分の担任するクラスの進路指導に手を焼いていた。

誰もがみんな自分を特別視し、過大評価し過ぎている。

中でも手を焼いているのは……小嶋智。

このままでは進学どころか卒業すら危うい。

しかも小嶋はとても生意気で、丹波の言うことなど聞こうともしない。

さらに同僚の教師からも注意され、板挟みで辛い毎日を送っていた。


【雪の降る町、春に散る花】

「残念ながら不合格です」

受話器の向こうからノイズまじりの大学受験合否判定の声が聞こえてきた。

高校のある町の電話ボックス、三月四日、秋元と佐々木が別れるまでのカウントダウンが始まった。

佐々木は野球部のエースで、二年の時のクラスメートだった。

告白の言葉はとても明快で、秋元はすぐに了承した。

とても楽しかった。

だがすぐに二人の前には進路選択という道が迫ってきた。

秋元は東京の私立大学を目指していた。

佐々木は地元の公立大学を目指していた。

秋元は、佐々木と東京のどちらか一つを選ばなければいけないのなら……。

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