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昔話『サンタクロースが死んだ夜に』5

前回のあらすじ

クリスマスパーティに招待することに成功した。

心労が4あがった。

面倒くさいという気持ちが7あがった。

経験値は、もらえなかった。



F「う、うわぁ~!!」

ホラー映画に一人は登場するヘタレキャラのような叫び声をあげてみんなの元へ逃げていきました。

私の横を通り過ぎるとき、私を見てさらに顔を青ざめていました。

まったくどこまでも失礼な奴です。

×××が私の存在に気づいて寄ってきました。

×「なんでいるの」

私「……」

私はすぐには答えません。

ちょっと横を向いて頬を赤らめながら言いました。

私「×××のことが……心配だったから」

私の気持ちを告白してしまいました。

彼女は何も言わずに黙って私を……。
















殴りました。













私「いたい」

×「みえすいた嘘つくからでしょ。見てたなら助ける!」

そう言うと、もう一発殴ってきました。

私「はい……腕見せたんだ」

×「言っても聞かないから」

彼女の腕には、縦横無尽に走る無数の赤い線がありました。

他人を傷つけ自分を傷つけるから――傷女。

以前よりは傷の数は減ってしまいましたが、今も彼女の腕には赤い線があります。

私「Fは受け入れなれなかったんだね」

×「当然でしょ。
 こんな傷だらけの女を受け入れられる奴なんているわけないでしょ」

私「そうかな。奇麗だと思うけどね」

私は笑みを浮かべて、彼女の腕の傷をそっと撫でました。

×「あんたの笑顔は信用ならないから嫌い」

嫌がるようでもないので私は傷を愛でながら言いました。

私「人は信用できないよ。
  特に愛想笑いしか浮かべない奴は絶対信用しちゃいけない」

×「じゃああんたのことは絶対信用しないから」

彼女は言いました。

私「うん、それがいいよ。
  いつか×××の腕の傷も心の傷も受け入れくれる人が現れてくれるといいね」

×「はっ。それはあんたのことでしょ
 あんたの嘘に付き合ってくれる女が見つかればいいわね」

私「うん。それがイカレた女の子ならすごくいいなあ」

×「頭おかしいんじゃないの」

私「何を今さら」

そこで私たちは笑いました。

普通の少年と少女のように楽しそうに。

でも彼女は少女というより傷女ですし。

私は少年というより笑年です。

彼女は自分を傷つけ、私は愛想笑いで本心を隠してしまうのです。

一度傷ついた人間は誰よりも傷つくことに敏感になります。

そんな人達が傷つかないためにとる手段はそれぞれ違うのです。

私「弱い奴ほど傷つくのが怖いんだよね」

×「は?」

私「×××は自傷行為をこれからも続けるの?」

×「あんたはこれからも愛想笑いを浮かべて嘘をつくの?」

私「うん。だって弱いから」

×「あたしは分からない……」

私「そう。それでいいんじゃないかな。×××らしい答えでいいと思う」

×「意味分からない。ただ決めずに保留しただけじゃん」

私「保留って便利だよね。好きだよ、保留。
  問題をそこに残したまま自分だけ先に行っちゃう。
  でもその場に残した問題は一生心に残る」

×「喧嘩売ってんの?」

私「売ってないよ。
  その置いてきぼりにした問題を片づけに戻る人もいれば残したまんま死ぬ人もいるってことを言いたかっただけ」

×「あっそ。興味ないから」

私「×××はどっちだろうね」

×「ねえ、その呼び方やめくれない」

私「嫌い? せっかくつけたニックネームなのに」

×「あんた分かっててつけたでしょ、×××って」

私「名前を呼ばれる度に自分の抱える問題と向き合わなければいけないっておもしろくない?」

×「悪趣味。死ね、キチガイ」

私「まあね。死にたくなったら頼むよ……×××」

私と×××は、みんなのところへ戻ることにしました。

歩きながら私は思いました。

保留にした問題を片づけるのは、なにも自分とは限らないということに。

だれかに自分の問題を丸投げして片づけさせればいいのですよ。

それで自分の問題が片づくなら……。

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