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本『噺家ものがたり~浅草は今日もにぎやかです~」 村瀬健

『噺家ものがたり~浅草は今日もにぎやかです~」 村瀬健 メディアワークス文庫



大学生の千野願は、寝過ごしてしまった就職の最終面接へ向かうタクシーの中で、ラジオから流れてきた一本の落語に心を打たれる。

その感動から就職はもちろん、大学も辞め、希代の天才落語家・創風亭破楽への弟子入りを決意。

何度断られても粘りを見せ、前座見習いとなるも、自らの才能のなさに落ち込む、

そんなある日、初めて人を笑わせる快感を覚える。

道が開けたように思えたそのとき、入門前から何くれとなく世話を焼いてくれた兄弟子・猫太郎が突然――。

第24回電撃小説大賞選考委員奨励賞受賞作。


つづきはネタバレ注意






企業の最終面接を控えた大学生はタクシーの中で聞いた落語に心打たれる。

すぐに退学して落語家に弟子入りを決意。

何度断られても粘りを見せ、前座見習いと認められて師匠や兄弟子に付いて回る日々。

私の苦手なメディアワークス文庫。

電撃小説大賞の受賞作なので勉強目的で読んでいる。

最初からつまらないものと思って読み始めるので全く期待していなかったが、これはおもしろかった。

私が落語好きというのもあるかもしれない。

ただ、好きだからこそ評価厳しくなると思ったけれど、おもしろかった。

序盤は。

うん、序盤はよかった。

大学四年生で企業の最終面接をぶっちして落語家に弟子入りするという簡潔かつ大胆な導入部で読者を惹き込みつつ落語を知らない人にもわかりやすく説明臭くならずにストーリー展開するのは良い。

主人公が惚れこんだ天才肌の師匠の語る作中の落語やネタもなかなか上手いと思えた、序盤は。

連作短篇形式でまじめで熱血肌の主人公と厳しくも優しい師匠と一門の個性的な面々、浅草の人たちとの人情あふれる交流や落語家として成長していく物語もなかなかおもしろい。

しかし中盤から落語やネタが滑り始める。

上手くない、落ちてない、おもしろくない。

なのに文中では「観客が沸いた」「上手い」などと書かれる。

作中の客にはそうかもしれないけど、読者である私には合わなくなった。

このネタが最後まで楽しめた人にはおもしろいと思えるんじゃないかと。

それでも読み進めていくと主人公以外の登場人物が中心に描かれていき、最後のオチもその人に持っていかれてしまう。

序盤だけなら大賞よりはるかにおもしろいと思ったけれど、最後まで読んだら選考委員奨励賞も納得した。

この作品に出てくる落語家の師匠のモデルはおそらく立川談志さんじゃないかな。

弟子に対してぶっきらぼうな口調やですます調の丁寧なしゃべりが入り混じる話し方や誰彼構わず口を出してしまう喧嘩っ早いところがそれっぽい。

あとは落語協会に所属していないというのも立川流一門の特徴だから。

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