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本『プシュケの涙』 柴村仁

『プシュケの涙』 柴村仁



夏休み、補習中の教室の外を女子生徒が落下していった。

上の四階からの飛び降り自殺として少女・吉野の死が静かに葬り去られようとしていた。

そのとき、目撃者の男子・榎戸川と旭に真相を問い詰めたのは少女と同じ美術部の男子・由良彼方だった。

登校拒否で授業に出ていなかった吉野は、ひそかに美術部に蝶の絵を描きに来ていたのだ。

絵を描きかけのままで死ぬはずがない……。

やはり二人は彼女の死の真相を知っていた。

彼女は自殺ではなかったのだ。

少女が迎えた悲劇は自殺より更に残酷で無情だった。

平凡な高校生たちの日常が非日常に変わり人間模様が陰影を織りなす瞬間を、デリケートな筆致で綴る青春ミステリー。

つづきはネタバレ注意







夏休み、一人の少女が校舎の四階の生物準備室から飛び降りた。

彼女はなぜ死ななければならなかったのか?

彼女と親しかった美術部員の由良はその謎を探る。

飛び降りる瞬間を窓から見た少年の視点と飛び降りた少女の視点で描かれる二部構成。

ミステリではなく青春小説かな。

私がおもしろいと思った数少ないラノベの一つが『我が家のお稲荷さま。』でその作家さんの作品だから期待したんだけど、期待は越えられなかった。

うーん、キャラもストーリーも薄いような。

本に書かれていたあらすじの一部「真実は残酷なまでに切なく、身を滅ぼすほどに愛しい」って……誇大広告というかあらすじ詐欺じゃないかと思った。

謎を探っていくというミステリ風の書き方をするならどうして死んだ彼女と仲の良かった男視点で描かなかったのだろう。

そうすればあの人たちの嘘や事情が少しずつ浮き彫りになるし、後半の少女が生きていた頃の思い出が「この子も辛い人生の中で理解者がいたんだね……」って涙を誘えたのになぁと。

目撃者視点で書いてしまうと「なぜ飛び降りたのか」という明かされる真実がものすごく陳腐に感じてしまったんだけど、絶賛しているファンに怒られるかな。

仲のいい男視点で書いた方が彼らにもなんとしても守りたい女の子がいたんだということが後からわかって対比になって良いと思うんだけど。

二部構成後半の死んだ少女視点の物語もちょっとモヤッとした。

暗くて重い設定が嫌いではないし、もう死ぬ未来は決まっているから救いようがないのも悪くないんだけど、クズな父親をなんの解決もしないままフェードアウトさせたのはいただけない。

困難となる壁をどう対処するのかがおもしろいのに。

家庭にも学校にも居場所がない女の子に手を差し伸べてくれた変わり者の男の子と少しずつ交流しながら自分の居場所を作っていくという青春ものとしてはありがちだけど定番なのは読者もわかっているからそれをどう対処してどう落とすのかのかが作者の腕の見せ所だと思うんだけど(個人的意見

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