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本『薔薇忌』 皆川博子

『薔薇忌』 皆川博子 実業之日本社



降りしきる薔薇の花びらに埋もれて死ぬことを夢見た劇団員(「薔薇忌」)。

濃密な淫夢に日常を侵される歌舞伎小道具屋の娘(「紅地獄」)。

元スター歌手の再起に賭ける芸能プロデューサー(「化鳥」)。

舞台芸能に生きる男女が織りなす世界を、幻想的な筆致で描いた珠玉の短編集。

著者の独創性を世に知らしめた柴田錬三郎賞受賞作。

テンポよく官能的な会話や人間の愛憎や妄執を描く文章力がすばらしい。

現実と幻想が入り混じる耽美的で怪しげな作品世界がよく伝わってくる。

どのお話もとてもおもしろかった。

正直に言うと、ここ最近は読書があまり楽しくありませんでした。

しかし、この作品は本当におもしろかったです。

久しぶりに心から「おもしろい」と言える作品に出会えました。

ミステリも書かれる方だからか、幻想小説ながら結末であっと驚かせる真相が待っていてどの話も楽しませてくれる。

死んだ人間よりも生きている人間の方が恐ろしいという著者の信条が最大限に活かされている。

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