少しイカレてるくらいがちょうどいい
本『対話篇』 金城一紀 新潮文庫
本当に愛する人ができたら、絶対にその人の手を離してはいけない。
なぜなら、離したとたんに誰よりも遠くへと行ってしまうから——。




【恋愛小説】
これから僕が話すのは、大学時代に知り合ったある友人の話だ。
彼のことを思い出すたびに、僕は十四歳の頃を、初めて真剣に好きになった彼女のことを、思い出してしまうのだ。
大学生活最後の刑法の試験を受け終えた僕は長いため息をついた。
試験監督をしていた教授の谷村が冗談を言って笑いをとっているが、僕は席を立ち教室を出た。
教室を出てから煙草を吸おうとしたときに、彼に会った。
二年まで語学の授業を受けていたクラスメイトとの久しぶりの再会だった。
ゼミをクビになっていた僕はいつも暇で、彼に誘われて彼の家に寄った。
彼の豪邸のような家に着くと彼は「僕は子どもの頃、《死神》の子って呼ばれてたんだ」という語りだして話を始めた。
彼と仲が良かった両親が死に、友達の女の子も死に、親戚で唯一優しくしてくれた叔母も死んだ。
それ以外にも彼は五人の友達を失っていた。
不吉な噂は光よりも早く伝わり、彼には友達もいなくなり親戚も寄りつかなくなった。
そして、月日が流れ、大学三年になった彼はある女のこと出会った。
「彼女は突然、僕の人生に飛び込んできたんだ」
彼は比喩ではなく、文字通り飛び込んできたのだと言った——。
【永遠の円環】
最強のドラッグは何か。
答えはコカイン? 覚醒剤? LSD?
正解は抗ガン剤だ。
大学生の僕は抗ガン剤を投与され続け、副作用で頭が禿げ上がり、内臓は荒れていた。
ある日、抗ガン剤投与がうち切られ僕は個室に移った。
個室に移るというのは、死へ一歩近づいたことを意味する。
僕は個室に移ってすぐに脱走した。
なぜなら死ぬ前に殺さなきゃならない奴がいるからだ——。
僕の脱走は失敗し、僕は友達に見舞いに来るように頼むようになった。
何人もの友人が来たが、僕の現実を直視する者はいなかった。
そんなある日、Kが病室を訪れた。
特に親しいわけではなかったが、彼は現実を直視してくれた。
そして僕は彼にある頼み事をしたのだ——。
【花】
ある日、銀行に勤めている僕は出勤のためにいつものように家を出た。
路上を歩いていると、突然目眩に襲われて倒れてしまった。
翌朝、僕は大学病院で目が覚め、脳神経外科の医師の話を聴いた。
脳内の血管の一本に動脈瘤が原因で倒れたという。
それを取り除くのはとても危険な手術で、何かのはずみで記憶に障害が残ってしまうという。
僕はそのことを恋人に話したが、彼女の態度は冷たかった。
病院から戻った翌日、僕は何事もなかったように、出勤した。
だが、意識を失った日から四日経った日、退職願を出した。
長野の実家の家族には学生の頃、諦めた司法試験に再チャレンジするために会社を辞めたと嘘をついた。
それから一日中、寝て過ごす毎日を送っていた——。
五ヶ月後、僕は生き延びていたが体重を十二キロ増やしていた。
そんなある日、大学時代の先輩から急なアルバイトを頼まれる。
その内容は、先輩の知り合い弁護士を鹿児島まで車で送ること。
しかも高速道路ではなく、国道だけをつかって行くのだそうだ。

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本当に愛する人ができたら、絶対にその人の手を離してはいけない。
なぜなら、離したとたんに誰よりも遠くへと行ってしまうから——。
【恋愛小説】
これから僕が話すのは、大学時代に知り合ったある友人の話だ。
彼のことを思い出すたびに、僕は十四歳の頃を、初めて真剣に好きになった彼女のことを、思い出してしまうのだ。
大学生活最後の刑法の試験を受け終えた僕は長いため息をついた。
試験監督をしていた教授の谷村が冗談を言って笑いをとっているが、僕は席を立ち教室を出た。
教室を出てから煙草を吸おうとしたときに、彼に会った。
二年まで語学の授業を受けていたクラスメイトとの久しぶりの再会だった。
ゼミをクビになっていた僕はいつも暇で、彼に誘われて彼の家に寄った。
彼の豪邸のような家に着くと彼は「僕は子どもの頃、《死神》の子って呼ばれてたんだ」という語りだして話を始めた。
彼と仲が良かった両親が死に、友達の女の子も死に、親戚で唯一優しくしてくれた叔母も死んだ。
それ以外にも彼は五人の友達を失っていた。
不吉な噂は光よりも早く伝わり、彼には友達もいなくなり親戚も寄りつかなくなった。
そして、月日が流れ、大学三年になった彼はある女のこと出会った。
「彼女は突然、僕の人生に飛び込んできたんだ」
彼は比喩ではなく、文字通り飛び込んできたのだと言った——。
【永遠の円環】
最強のドラッグは何か。
答えはコカイン? 覚醒剤? LSD?
正解は抗ガン剤だ。
大学生の僕は抗ガン剤を投与され続け、副作用で頭が禿げ上がり、内臓は荒れていた。
ある日、抗ガン剤投与がうち切られ僕は個室に移った。
個室に移るというのは、死へ一歩近づいたことを意味する。
僕は個室に移ってすぐに脱走した。
なぜなら死ぬ前に殺さなきゃならない奴がいるからだ——。
僕の脱走は失敗し、僕は友達に見舞いに来るように頼むようになった。
何人もの友人が来たが、僕の現実を直視する者はいなかった。
そんなある日、Kが病室を訪れた。
特に親しいわけではなかったが、彼は現実を直視してくれた。
そして僕は彼にある頼み事をしたのだ——。
【花】
ある日、銀行に勤めている僕は出勤のためにいつものように家を出た。
路上を歩いていると、突然目眩に襲われて倒れてしまった。
翌朝、僕は大学病院で目が覚め、脳神経外科の医師の話を聴いた。
脳内の血管の一本に動脈瘤が原因で倒れたという。
それを取り除くのはとても危険な手術で、何かのはずみで記憶に障害が残ってしまうという。
僕はそのことを恋人に話したが、彼女の態度は冷たかった。
病院から戻った翌日、僕は何事もなかったように、出勤した。
だが、意識を失った日から四日経った日、退職願を出した。
長野の実家の家族には学生の頃、諦めた司法試験に再チャレンジするために会社を辞めたと嘘をついた。
それから一日中、寝て過ごす毎日を送っていた——。
五ヶ月後、僕は生き延びていたが体重を十二キロ増やしていた。
そんなある日、大学時代の先輩から急なアルバイトを頼まれる。
その内容は、先輩の知り合い弁護士を鹿児島まで車で送ること。
しかも高速道路ではなく、国道だけをつかって行くのだそうだ。


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