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昔話『Under The Smile』5

前回のあらすじ

裏切りの夕焼け

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ストーカー問題が解消され、私達は新たな問題を抱えている人に救いの手を差し伸べます。

一日に数人の生徒が私達の元にやってくることもあれば、一人の生徒も来ないことがあります。

私やRにとっては些細なことでしたが、Tにとっては死活問題でした。

T「金が欲しい……」

さながら金の亡者のようです。

まあ、お金を求めることは悪いことではありませんけどね。

しかし、お金の使いすぎで困るのは自己責任です。

私「駄菓子を買いすぎなんだよ」

私は読んでいた本を閉じて彼を諌めます。

昨日も彼は駄菓子屋で得たばかりの給料を使って色々と買い込んでいました。

うまい棒、ソースせんべい、キャベツ太郎、よっちゃんイカなどです。

しかし給料以上の買い物をしすぎていました。

そのせいでもう金欠です。

T「そこに駄菓子屋があるから悪いんだ」

私「使いすぎたお前が悪いんだろ」

T「しかし、今日は客が来ないなー」

R「そうだね。ここ最近かなり減ったね」

私「そろそろ廃業かも」

T「はぁ!? まだ全然稼いでないだろ」

そうは言いますが、これから先私達の元に来てくれる人は減る一方でしょう。

元々この商売が長く続くとは思っていませんでしたし、自分としては頃合いかなと思っていました。

私(それに、もう飽きちゃったんだよね)

私は彼らから離れてトイレに向かいます。

すると、その道中でイヌ、サル、キジが立っていました。

勘違いしないでくださいね。

私は桃太郎ではありませんし、心優しい私が鬼ということは絶対にありません。

私に配役があるとしたら、お話に直接関わることができない村人Aです。

しかし、準主役級の人達が村人Aの私に何の御用でしょうか。

隠しダンジョンの位置もタンスの中にあるお金の場所も知りませんよ。

私(RPGをやったことがないから)

ピコピコという音がどこかで流れていないかと考えながら彼らの横を通り抜けます。

犬「おい。待て」

雉「ここを通りたかったら桃太郎に会え」

猿「桃太郎さんが待ってる」

私「……」

ここでは桃太郎さんにしていますが、本名は全然違いますよ?

現実で桃太郎と子どもに名づける親がいたら、キラキラネームをつける親からも心配されてしまうでしょう。

私は犬猿雉に無理矢理に空き教室に連れて来られました。

そこには桃太郎という名前を借りた変態野郎がいました。

ス「よく来たな」

私「何か用、変態ストーカー野郎」

ス「あ? ふざけんなよ」

私「差出人不明の手紙を出したり家までついていったりストーカー予備軍だろ」

私は嘲笑ってやりました。

すると、ストーカーくんが顎をくいっと上げます。

私の元に犬と雉がやってきて両腕をつかんできました。

そこに猿のボディブローが放たれました。

私「ぐぅっ……」

プロボクサーは体にいくらパンチを喰らっても問題がないほどの耐久力を持っているそうです。

しかし残念ながら私はプロボクサーでもアマチュアボクサーでもない素人です。

なんとか胃の内容物を吐き出さないように我慢しました。

ス「口の利き方に気をつけろよ、クソ野郎」

私「ってか……何の用……?」

私は乱れた呼吸を整えながら聞きます。

左右には犬と猿がピッタリとついたままです。

あれ、猿と雉でしたっけ?

まあ、どっちでもいいです。

彼らの名前も顔も覚える気は全くありませんから。

ストーカーくんは怒りに満ちた表情で私を睨みつけてきます。

ス「いい気になるなよ」

私「……」

ス「TとRがいっしょにいていい気になるなよ」

私「……」

ス「おい離せ」

その一言で私の両腕から動物たちが離れていきました。

そのまま腕を広げた状態で「さあ、森へお帰り」とはやりませんでした。

かといって、腕を伸ばして顔面をぶち抜くこともしませんでした。

四対一で喧嘩をして勝てるほど私は強くないです。

ス「行け!」

言われなくても出ていくつもりでした。

教室から出る直前、猿か犬に背中を殴られました。



鈍痛を背中に抱えながら登校しました。

今日も雨が降り続いていました。

梅雨ですからね。

雨でない方がおかしいです。

私「……」

自分の席に座って考え事をしました。

ストーカーという生き物は、どうしてこうも気持ちが悪いのでしょう。

とても粘着質な奴が多いです。

一度や二度の注意では全く意味がなかったようです。

解決したのが被害者本人ではなく、被害者の関係者だった場合はもう最悪ですね。

その関係者を逆恨みすることもありますから。

そのストーカーも逆恨みするクズでした。

そしてその逆恨みの相手に……私を選んできました。

私(あーめんどくせー)

あれから私は殴られ屋の真似事をすることになりました。

アルバイトではなくボランティアです。

お金なんてもらえるわけがありません。

桃太郎犬猿雉が満足するまで殴られ屋のボランティアは終わりません。

今なら昔話に出てくる鬼達の気持ちが分かる気がします。

ボッコボッコノフルボッコなのです。

しかも奴らは狡猾なので、服で隠れて見えない部分を重点的に殴ってくるのです。

私はプロボクサーでもアマチュアボクサーでもない素人だというのに。

最近では私のことを噂するクラスメイトが現れ始めました。

そのほとんどは悪い噂でしたが、根も葉もない嘘の話でした。

この状況でも私の精神は保っていられました。

私は殴られることも罵られることも慣れているのです。

そういう環境で育ったおかげだからかもしれません。

教室の掛け時計を確認すると、そろそろTとRがやってくる時刻でした。

私「あ、おはよう」

そう思っていると、ちょうどTとRが教室に入ってきました。

しかし私があいさつしても返事がありません。

ただの屍のようです。

さらに言えばいつもより目が血走っている気がします。

私は椅子から立ち上がってどうかしたのかと尋ねようとしました。

しかし、Tが拳を突き出して寄せ付けません。

私「なに?」

T「よくも騙してたな」

私「え……」

T「え、じゃねーよ」

私「……」

心当たりはありましたが、弁解する余地はあります。

なんとか説明しようとしたところで再び拳を突き出され、今度は胸に当たりました。

そしてTは吐き捨てるように言いました。












T「二度と俺たちの前に現れるな、嘘つき野郎」












この瞬間、私はすべてを失ってしまいました。

次の瞬間、私は――。

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