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昔話『ライラックの咲かない冬』

ある年の暮れのことでした。

年末ということでスーパーマーケットやデパートでは売りつくしセールが行われています。

ちょうど同じ頃、私も愛想笑いセールをやっておりました。

笑えなくても笑わなければいけない時があるのです。

誰にでも。



「あなたは昔からダメだったからねぇ」

私「そうだね(・∀・)」

「素直じゃないからねぇ」

私「ひねくれてたからね(・∀・)」

「それに比べてあの子は素直ねぇ」

近くにいた血のつながりのある妹を見て言いました。

私「私とは全然違うよね(・∀・)」

「それより就職はこっちでするの?」

私「どうだろう。あっちとこっち両方考えてるけど(・∀・)」

「あなたは都会に向いていないから帰ってきなさい」

私「そうかな(・∀・)」

障害のあるピアニストの特番宣伝がテレビに流れました。

「体に障害があるなんて生きにくいでしょうねぇ」

私「……(・∀・)」

「生きてるのが辛いでしょうねぇ」

私「…………(・∀・)」

「あなたは障害がなくてよかったわね」

私「………………」

愛想笑いセール終了のお時間ですー。

私はその場を離れて商店街の一角にあるケーキ屋さんに向かいました。

クリスマスを過ぎたケーキ屋さんは、それほど忙しくないようです。

それとも商店街の小さなケーキ屋さんだからでしょうか。

私以外に二人しか客がいません。

「幸せ」という感じを知っていそうな主婦と「幸福」という漢字を知らない女の子です。

私はショーケースに並んだケーキを見ながら他の客が帰るのを待ちます。

店員からケーキの入った箱を受け取り、幸せそうに笑いながら帰っていきます。

営業スマイルを浮かべていた店員がこちらに顔を向けました。

そこで私と初めて目が合います。

私達は見つめ合い、互いに口を開きました。














私「久しぶり、×××」

×「何しに来たの、キチガイ」













客に向かってキチガイ呼ばわりとは、どういった店員教育をなさっているのでしょうか。

幸いなのか、辛いのか、接客担当は彼女一人だけです。

奥の厨房には白い帽子を被った職人たちが一生懸命働いています。

年末でもお仕事がある方は大変ですね、と他人事のように考える私です。

ええ、他人事ですからね。

私「エクレアください」

エクレアは、シュークリームのバリエーションの一つらしいですよ。

×「ここを出て左に行って、信号を渡らずに左に曲がって真っ直ぐ行ったらコンビニがあります」

店員は営業スマイルを浮かべてコンビニの位置を教えてくださいました。

私「エクレアください」

コンビニスイーツも悪くないですけどね。

×「申し訳ありません。売り切れです」

営業スマイルは崩しません。

私「じゃあシュークリームください」

時には妥協も大事です。

×「150円です」

ショーケースを開けて袋に詰めてくれました。

私「はい」

×「150円。ちょうどお預かりいたします」

私「バイト何時に終わる?」

×「あと一時間」

私「神社で待ってる」

×「うん」

私はシュークリームの入った袋を持ち、店の扉の前まで行きました。

そこで振り返って愛想笑いを浮かべて言いました。

私「制服似合ってるよ(・∀・)」

レジスターにお金を入れ終えてこちらに顔を向けます。

×「バーカ」

×××は無表情で言いました。

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