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昔話『ドウゲン坂から』

ある年の七月末のことです。

全国の学生さんはすでに夏休みに入っていましたが、私の通っている学校はまだでした。

小学生はもちろんのこと、中学生も高校生も夏休みに入っているというのにです。

それに対して愚痴や不満を言っても意味がないので、学生たちは試験勉強するしかありません。

友「なんでうちの大学は夏休み始まるの遅いんだよ……」

友くんは愚痴をこぼしながら紙にペンを走らせます。

き「なんでだろうねー。終わるのは早いのにねー」

きーちゃんはチーズバーガーを食べながら微笑んでいます。

私「友は黙って勉強しろよ」

私はため息をついてから友くんを一瞥します。



私と友くんときーちゃんは、ファストフード店の二階の禁煙席に座って試験勉強をしていました。

といっても、試験勉強をしなければいけないのは友くんだけです。

私と知り合ったばかりの友くんはごく普通の人でした。

これといって何の取り柄もなく、どこにでもいる普通の男の子です。

漫画やアニメの主人公に向いているタイプですね。

特にラブコメ。

ラブコメの主人公に向いていない私とは正反対です。

しかし最近では、愛しのきーちゃんといっしょにバカップルをやっているせいで「バカ属性」が付け加えられた気がします。

バカップルとはいえ、彼女役を務めるきーちゃんはとっても聡明な女の子ですけどね。

試験があることを前日まで忘れていた彼氏の友くんとは違います。

バカップルというのは片方が馬鹿でも成り立つものなのですね。

き「すーくんは試験あといくつ?」

私「レポートが二つと試験が二つだよ。きーちゃんは?」

き「試験が三つ。それが終われば夏休みだねー」

私「ねー」

きーちゃんは私のことをすーくんと呼びます。

私の本名に全く関係していないニックネームですが、わりと気に入っています。

私は彼女のことをきーちゃんと呼んでいます。

彼女の本名に全く関係していないニックネームですが、彼女も納得してくれています。

他人から見たら友くんではなく、私と彼女がバカップルやっているようにも見えますが、それは絶対にあり得ないことです。

だってきーちゃんは友くんのことを愛しすぎているからです。

き「友くん。ケータイ電話見せて♪」

友「なんで?」

き「友くんが変な女とメールとか電話してないか確認するために決まってるでしょ?」

友「……(・Д・;)」

友くんが私に目で助けを求めてきます。

私は「追加料金払えよ」と目で応えます。

私「きーちゃん。試験が終わったらどうするの?」

きーちゃんの意識を友くんのケータイ電話から外させます。

き「そんなの決まってるよ。友くんとデートするの♪」

私「そっかー。海とか山とか遠くに行けたらいいねー」

その全くブレないキャラ設定は、全国のアイドルが参考にするべきですよね。

もっとも、これがきーちゃんの素なのかもしれませんけれど。

どちらでしょう。

どちらにしても私はきーちゃんのようなイカレた女の子が大好きです。

き「すーくんはどうするの?」

私「特に決まってないよ。お盆までには実家に帰るけど」

き「そっか。じゃあ当分会えなくなっちゃうね」

私「そうだね」

き「じゃあ試験が終わったら三人で遊びに行こう!」

私「いいね。行こうか」

き「うん。この機会にすーくんに愛の大切さを教えてあげるよ」

私「…………」

ラブコメの主人公に向かないほどには相手の言いたいことや気持ちに気づくことができます。

しかしその時の私は、彼女のやろうとしていること言わんとしていることに全く気づけませんでした。

私「まあいいけどね。それで、どこへ行くの?」

き「それは試験が終わってから教えるね♪」

きーちゃんはニコニコ笑って言いました。

私は愛想笑いで返しました。

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