忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



本『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん『i』 記憶の形成は作為』 入間人間

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん『i』 記憶の形成は作為』 電撃文庫(アスキー・メディアワークス)

著:入間人間 

イラスト:左

ぼくのこころに連絡を取る。

ノイズばかりだけど、辛うじて通信はできた。



むかしのことを考えると頭の中が深夜のテレビみたいにノイズだらけになるさっこん、いかがお過ごしでしょうか。

これは、ぼくがまだ僕になる前の話だ。

家庭内にぎやか事件のあと、ぼくはいろんな人と出会った。

恋日先生、じさつ志願者、いじめっ子少女、にもうと、そして、マユちゃん。

みんな(とくにマユちゃん)の純粋むくな姿がめじろおしでおとどけなのである。

……むかしのぼくは正直ものだったんだよね。

うそだけど……今度、じしょでうそって字を調べとこう。


春『うそが階段を上るとき』

春に出会ったのは。

ぼくに空の落ち方を教えてくれた大人。

あの事件から解放されたぼくは精神病院に入院している。

そこには共有のテレビを占領するいけない女の人、ヤマナさんがいた。

あ、そういえば屋上のフェンスを破ろうとしているのは誰だろう。

もしかしたら病院内にいる誰かが飛び降り自殺でも考えているのかもしれない。

それを実行しそうな人がここにはたくさんいるわけだし。


夏『ともだち計画』

夏に出会ったのは。

ぼくの大切になれなかったともだち。

ぼくが学校に通うようになったのは七月の始めだった。

4年1組 枝瀬××

本当ならぼくは5年生として学校に通うはずだった。

しかしぼくは一年間地下生活を余儀なくされたわけで、だから一年間無駄に過ごしてしまったわけ……。

こうして、ぼくはもう一度4年生をやり直さなければいけない。

同じように菅原くんやマユちゃんも4年生をやり直すはずだ。

学校というものはおばさんの言っていたとおり、全く楽しいものではなかった。

そしてぼくが所属するクラスには何かとつっかかってくる女の子がいた。

彼女の名前は――浜名遠江。


秋『蟻と妹の自転車籠』

秋に出会ったのは。

ぼくの記憶に居場所のない思い出。

十月十日、体育の日。

ぼくの小学校では運動会ではなく遠足の日になっていた。

ぼくは普通に列の最後尾を歩いていたはずが、いつの間にか普通に道に迷っていた。

これはいかんですよ、と思いながらもぼくは思い出す。

ぼくが初めて、妹といっしょに山に行った日のことを。

あんなに自分の血を流したのも初めてだったなぁ。


冬『Happy Child』

冬に出会ったのは。

互いに相手が見えない、ぼくと彼女。

その日は学校帰りに、坂下恋日先生のいる病院を訪ねていた。

定期検診というやつだ。

学校がどれくらい退屈か聞かれたり、恋日先生の小学校時代のことを聞かされたりした。

御園さんのことも聞かれたけど、ぼくは何も答えられなかった。

だってぼくと彼女はクラスが違うから。

それから病院の外に出ると、素直に帰れなくなってしまう。

目の前にしかめっ面をした女の子、御園マユがいたから。

そしてぼくは彼女のニックネームを呼んでしまう。

「まーちゃん」と……。


とってももしもにもしかして『壊れていない正しさのある世界なら』

誰が望んだか知れない夢で出会ったのは。

身分詐称の幸福。

「起きなさい、あい」

下の名前を言葉の飾りつけなしに呼ばれるのは、好きじゃない。

高校二年生にもなって母親を自室に踏みこませるという失態をしてしまった。

父の天野南、母の天野美沙、兄の天野司馬、それとぼくの四人家族。

二人目のお母さんもいないし、下の妹なんてのもいない。

ぼくは朝食を食べると、高校へ行く準備をして家の外で彼女が来るのを待つ。

そうしているうちに待ち人がヘルメットを被って自転車に乗ってやってきた。

天野家とお隣さんである伏見家のご令嬢こと、伏見柚々だ。

ぼくはいつも彼女と学校に向かう。

学校には海老原香奈恵、菅原道真、琵琶島八事、一宮河名、宗田義人など、どこにでもいそうな友人や後輩たちがいる。

退屈かもしれないけど、とても大切なぼくの三百六十五分の一。

ぼくの世界が、壊されませんように。

人気ブログランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
blogram投票ボタン ブログランキング

拍手[0回]

PR


この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿


この記事に対するトラックバック

トラックバックURL