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昔話『裏通りサディスティック』 10

前回のあらすじ

初めて会ったときのこと、覚えていますか?



私「覚えてるよ」

あれは、小学生のときでした。

夏の暑い日でした。

席が隣同士になったとき、隣に座ったのが×××でした。

彼女は真夏日に長袖を着ていたので、私はそれを指摘しました。

そしたら……殴られました。

小学生女子のビンタが痛くありませんでしたけど、衝撃的な出会いでした。

それから私は、嫌がる彼女に付きまといました。

ストーカーではありませんよ。

なぜ長袖を着ているのか、気になったからです。

うっとうしくなった彼女は、私を突き放すために長袖の下を見せました。

その下にあったのは、リストカットの痕でした。










×「あの時は笑ったよ。リスカの傷痕見せられて、あんたなんて言ったか覚えてる?」

私「さあ」

本当は覚えていました。

×「きれいだ、って言ったんだよ。頭おかしいんじゃないかと思ったよ」

私「小学生でリスカする奴も頭おかしいだろ」

×「確かに」

いつの間にか私たちは、昔話で盛り上がっていました。

二人で深夜の学校に忍び込んだこと。

二人で夏祭りに行ってヤクザに追われたこと。

クリスマス会で×××に恋してる奴がリスカ痕を見せられてビビッたこと。

×「あの頃は楽しかったよね……」

私「そうだね」

×「戻れるなら……あの頃に戻りたい。あんたがいて、あんたの親友がいて、毎日馬鹿なことしたりイカレたことしたりして」

私「……」

先ほどまで楽しそうに話していた彼女の顔が急に曇り始めました。

ベッドを背にして座る×××に近づいて言いました。

私「ねぇ、腕見せてよ」

×「……いいよ」

彼女は、スウェットの袖をまくりあげてくれました。

そこには昔と変わらない、昔より増えた傷がたくさんありました。

彼女の白い腕の上で縦横無尽に走る赤い線――。

古いものや新しいものまで色々です。

私は、ささやくように言いました。













私「綺麗だ」














彼女は、とても辛そうな顔をして言いました。













×「死にたい……」













×「生きてるのが辛いよ……」













×「私が死ぬのを見届けてほしい」














ごめん、親友。

やっぱりお姫様を助ける役目は、王子様がやらないと意味がないよ。

私のような庶民の役割は、お姫様の死を見届けることしかできないみたいだ。

私「いいよ。見届けてあげる。
  そのかわり私との約束を果たして死んでよ」

×「約束?」

私は深くうなずいてから言いました。














私「私がどうしても死にたくなった時、お前が殺してくれるんだろ?
  私を殺して、お前も死ぬ。そういう約束だろ、×××?」



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読んでくださってありがとうございます<(_ _)>

この話がフィクションだと思いたい方は、そう思ってください。

ノンフィクションだと思いたい方は、そう思ってください。

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