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本『タイマ』 嶽本野ばら

『タイマ』 嶽本野ばら 小学館




この作品は、大麻所持で逮捕された作者の体験を基に書かれたものです。

大麻の所持・使用は、犯罪です。

初版限定 嶽本野ばら×BABY,THE STARS SHINE BRIGHT コラボ
      
     特製ポストカード付き!


ある日、新宿を歩いていた小説家の「僕」は、乾燥大麻と吸飲用のパイプを持っているところを警察官に見つかり、現行犯で逮捕される。

警察署に連行された僕は、警察官からの執拗な尋問を受けた。

大麻の入手先はどこか、大麻以外に何かやっているんじゃないか、どうして婚姻届を持っていたのか、など様々な尋問が繰り返された。

尋問が終わり、僕は電話をかけたいと願い出たが、要求は却下された。

僕の頭の中は、僕のことを心配する恋人のことでいっぱいだった。

その後、僕は留置所に移り、狭い独房で眠る。

耳の中では、『All Apologies』を歌うカート・コバーンの歌声が微かに、耳の奥で鳴っていた。


翌朝、警察官の怒号で起き、規則に従って布団をたたみ、洗顔をし、食事をとった。

そして再び警察の捜査が始まった。

家宅捜索のため、警察官と共に自分のマンションに行き、部屋をかき回されるのを黙って見続けた。

途中、MILK のカタログを破られたときにキレたものの、冷凍庫に入っていた乾燥大麻だけが見つかっただけで家宅捜索は終わった。

それが終わると、すぐに留置施設へ連れ戻される。

房に帰ってくると、ちょうど夕食だった。

しかし、朝食同様少ししか食べられず、食べた物も嘔吐してしまった。

その後、当番弁護士と呼ばれる弁護士と会い、任命するかどうか話し合った。

僕は、この弁護士が明らかにこの事件に興味がないことを感づき、任命を拒否した。

お金がないから私選弁護士を雇うことはできないが、それでもこの弁護士を雇おうとは思わなかったのだ。

房に戻るとすぐに就寝だが、僕は眠ることができず、考えるのは最愛の恋人のことばかり——。

精神安定剤を飲み過ぎてはいないだろうか、リストカットしてはいないだろうか、ご飯は食べているだろうか。

そんなことばかりが頭に浮かんでは消える。

僕が親愛なるカート・コバーンにお願いするのはただ一つ、僕の恋人を俗悪なマスコミから守ってほしい。


僕が彼女に出逢ったのは、一年と少し前ぐらいになる。

渋谷の道玄坂の辺りを、大麻でハイになりながらふらついていて、名曲喫茶ライオンに向かう途中、朧げな状態でヌード劇場に入った。

スポットライトに照らされ、音楽に合わせ、踊りながら衣装を脱ぎ、裸を見せる踊り子達のストリップ・ショー。

大麻をしているとき、好みの音楽が耳に入ってくるとテンションが上がるが、嫌いな音楽ばかり聴かされた僕は頭痛を催してきた。

だから、五人目の倖田來未の曲の途中で、僕は帰ろうとした。

が、扉を開こうとした瞬間、その曲が終わり、聴き慣れたあの曲が大音量でスピーカーから響いたのだ。

間違いなくそれは NIRVANA の『Smells Like Teen Spirit』だった。

踊り子は、他の踊り子と違ったパフォーマンスを披露していた。

花束で観客を叩き、ギターを振りまわし、『Breed』が流れ出すとステージを走り回り、客席にダイヴした。

彼女のショーが終わったのを確認すると、僕はライオンに向かうことにした。

その時、背後から大きな声で呼び止められた。

振り返って見てみれば、そこには全身 BABY,THE STARS SHINE BRIGHT で固めた完全無欠のロリータ・ファッションの女の子が立っていた。

その子が先程裸で踊っていた子だと気がつくのには、少し時間がかかった。

彼女の名前は、琴乎あい。

彼女と一緒に入った喫茶店で彼女と話をするうちに、彼女が自分と似た趣味嗜好だと知った。

HOLE のコートニー・ラヴが好きで、NIRVANA のカート・コバーンを崇拝している。

そんな二人の史上最強にパンクでピュアなラブストーリー。

<関連リンク>

本『ハピネス』

本『変身』

本『ロリヰタ。』

本『下妻物語』

本『下妻物語・完 ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件』

本『ミシン2/カサコ』

本『ツインズ 続・世界の終わりという名の雑貨店』
(『ミシン』収録作品【世界の終わりという名の雑貨店】 続編)

本『タイマ』

本『エミリー』

本『鱗姫』

本『カルプス・アルピス』

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