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昔話『コタツから眺める家族計画』 2

前回のあらすじ

「からあげレモン論争もきのこたけのこ戦争も、不毛だし、無意味だよね」

「丸善で本を積み上げて頂点に檸檬を置いてくる?」

「それもまた不毛だし、無意味だよね?」

「…………うん」

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そろそろ闇に紛れて生きることも検討したい精神状態のthreeです。

事の発端は一週間前でした。

私は普段あまり利用しない学生食堂に来ていました。

全体的に薄汚れた店内で、薄暗い厨房で老体に鞭を打って働いているおばさま方。

一枚の食券を握りしめて注文待ちの列を形成する疲れ切った表情の学生たち。

私もお盆と割り箸を持って料理を注文するために並びます。

今日、私が注文するのは、からあげ定食400円です。

基本的に私は自炊をしています。

私は料理ができる家庭的な女の子を目指していますからね☆

まだ見ぬ好きな人に食べてもらうため、愛情を込めた料理を作っています!

まあ、嘘ですけどね。

外食するためのお金がもったいないのと外に出るのが面倒くさいのといっしょに外食する恋人がいないのと……それと……。

これ以上は画面の前の誰かがむせび泣いてしまうのでやめておきます。

べ、べつに友達がいないわけじゃないですからね?

こんな時は歌を歌いましょう。

ディ○ニーの世界では歌を歌えば何でもできます。

アン○ンマンの世界では涙を流せば何かが起きます。

私(からーあげ美味しく作るならもみもみ~♪もみもみ~♪)

そうこうしているうちに私の番になりました。

私「からあげ定食ください」

食券といっしょに商品名を口頭で伝えます。

これで後は料理が来るのを待つだけです。

しかし思いもよらぬ質問が返ってきました。

お「ソースかける?」

私「え?」

ソース……ですか?

食堂内には、しょうゆとソースがそれぞれ所定の場所に置いてあります。

かけたい人はソースでもしょうゆでも好きなだけかけることができます。

薄味好きの私がそれらを利用したことは一度もありません。

しかし、それらのソースとは違うのでしょうか。

からあげ定食を頼んだ者だけが得られるソースなのかもしれません。

どうしましょうか。

かけるべきか、かけないべきか、二つに一つです。

どちらも選ばないなんて選択肢は存在しません。

少し迷っているとおばさんが少し苛立った口調で聞いてきました。

お「かけるの!? かけないの!?」

ぶっかけるのか!?

ぶっかけないのか!?

どっちなんだい!?

YES!! BUKKAKE!!

NO!! LEMON!!


























私「あうあうあー(^q^)」

友「うわ。何だそれ」

き「すーくんのからあげは真っ白だねー」

そうです。

私のからあげが……おばさんの手によって真っ白に汚されてしまいました。

こんなことならレモンの搾り汁をかけられた方が良かったです。

しかし、これは全て私の責任です。

どんなソースかも知らずにぶっかけることを許してしまった私の責任です。

信じて送り出した幼馴染が変顔にドハマリしてアヘ顔ダブルピースの写真を送られてきた人のような気分です。

私「この白い液体の正体は何?」

友「いや知らん。この学食で揚げ物を注文するとかけられるみたいだけど」

確かに周りの学生を見てみると、揚げ物に白いソースがかかっています。

皆、さも当然のようにそれを食べています。

もしかしたら見た目と違っておいしいソースなのかもしれません。

きっとそうです。

学生達の舌をうならせるほどおいしいソースなのです。

私「いただきます」

食事の前のあいさつをしてからみそ汁を飲みます。

薄味好きの私には少し濃すぎると感じてしまいます。

そしてからあげに箸をのばし、口に入れました。
























私「あうあうあー(^q^)」

友「クリスマスどうしようか☆」

き「どうしよっかー♪」

あれ、なんでしょうね。

この喉をかきむしりたくなるほどの疎外感は。

こういう時、どんな顔をすればいいか分かりません。

後日分かったことですが、この白いソースはフライにのみかけるようです(´・ω・`)

昼食後、友くんは次の講義に出ていきました。

私ときーちゃんはそのまま学食に残ってお茶を飲んでいました。

ああ、和みます。

きーちゃんは私の好きな人でした。

けれど想いを告げることはしていません。

友達以上の関係を望む前から友くんと恋人以上嫁未満の関係になっていたからです。

世界で一番好きだったけれど、決して付き合うことのできない女の子といっしょにお茶をしても問題はありません。

ええ、もう全然問題ありませんよ。

だって私はきーちゃんから恋愛対象として見られていないですからね!

ね、問題ないでしょう?

あれ、目から汗が……。

き「すーくん?」

私「なに?」

き「バイトしない?」

私「バイト……?」

アルバイトですか。

お金にはそれほど困っていませんが、きーちゃんの頼みなら無下に断るつもりはありません。

き「高校生の家庭教師なんだけどね」

私「家庭教師……高校生の?」

き「うん。妹ちゃんとSFちゃんの」

私「ああ……」

やはりそうなりますよね。

秋の高校の文化祭があった日を境に、きーちゃんの実妹とは距離を取ることにしました。

それでも時折、偽妹ちゃんから近況を報告するようなメールが送られてきていました。

それまでも似たようなメールをもらっていたのですが、以前よりもハートマークが多くつき始めました。

私の心は表現しようのない感情でいっぱいになっていました。

私「ごめん。それは引き受けられない」

き「すーくんお願い」

私「……」

き「……」

私「……」



















妹「おにいちゃん。これで合ってますか?」

私「えーと、うん。合ってる」

断ろうと思えば断ることもできたと思います。

それでもここにいるということは、まだ思うところがあったのかもしれません。

妹「よかった……」

私「うん……」

ああ、ヤバイです。

ちょっと昔のことを思い出して泣きそうです。

いつまで引きずるのでしょう。

いつまで傷ついているのでしょう。

いつまで恐れているのでしょう。

いつまで嘘をつくのでしょう。

この子とあの子は全くの別人なのです。

昔の人と今の人を重ね合わせるのは失礼なことです。

それでも私は……。

SF「せんぱーい。分からないところがあるんですけど」

私「どこ?」

というか、後輩は日本史の勉強をしているはずです。

日本史なら教科書や資料集を見ればどこかに答えが載っていると思うのですけどね。

よっぽどマニアックな問題が出たのでしょうか。

私も高校入試でマニアックな問題にあたったことがあります。

地元の中学生に“石原莞爾”の名前を知っている人はどれだけいたでしょうか。

コタツの右隣にいる後輩が解いていた日本史の問題が書かれたレジュメを覗きこみます。

そこには“夜鷹”という文字がありました。

SF「(・∀・)ウフフ」

私「(・∀・;)エェェ」

二人が通っている高校の日本史教師は、何を考えてこの問題を作ったのでしょうか。

きゃぴる~ん♪

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