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前回のあらすじ

君が好きだと叫びたい

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日本の大人たちが言うことには、日本の若者は色々なものから離れているようです。

それを「若者の○○離れ」といいます。

車、ギャンブル、酒、煙草などから若者が興味を持たなくなったことを嘆く大人達が考えた言葉です。

現代の若者が最初から車やギャンブルに興味を持っていたかどうかはともかくとして、上記に挙げたものから離れているようです。

そして大人達は、そんな若者達を見ながら嘆き憐れんでいるようです。

しかし、若者が何かから離れることはそんなにいけないことなのでしょうか。

それなら若者が親元を離れる「親離れ」もいけないことであり、嘆き憐れむ対象になると思います。

それから幼い子どもが母親の母乳から離れる「乳離れ」もいけないことであり、嘆き憐れむ対象になると思います。

ちなみに人間の男性は、いくつになっても人間の女性の乳に熱い想いを持つ生き物です。

まあ、屁理屈ですけどね……(´∀｀；)

そんな時は、由緒ある家柄の英国紳士の言葉を借りましょう。

こういう時は、嘘つきでイカレた日本人の言葉よりも紳士的でインテリな英国人の言葉を信じるべきです。

「逆に考えるんだ。酒や煙草が若者から離れているんだと」

つまりそう言うことです。

若者の意志とは関係なく○○が離れているのなら若者に罪はありません。

それに、人間の趣味嗜好というのは人それぞれですからね。

みんながみんな、煙草をふかして酒を飲んで車を乗り回すという警察に捕まるか否かのギャンブルに興味を持つ必要はないのです。

「○○離れ」の中には、結婚や恋愛といったものまで含まれているそうです。

きっと今の若者が好きな人を壊れるほど愛しても、三分の一も伝わらないでしょう。

伝えたい想いがあるのに伝えられない、それはとても辛いことだと思います。

「言いたいことも言えないこんな世の中じゃ～POISON♪」と同じです。

残り三分の二の想いを伝えるにはどうすればいいか、こういう時は恋している人に聞くのが一番です。

そう思って私は、先輩に「人を好きになるとは」という疑問をぶつけてみたのです。

先「今日のみりんちゃんは、変なことをたくさん聞いてくるね」

私「すみません」

先「今日のみりんちゃんはいつもより変だよ」

私「そうかもしれません」

先「それに、なんか疲れてない？」

私「疲れてませんよ」

大丈夫です。

問題ないです。

今のところ問題ありません。

先「人を好きになるって大学内を歩いている時にその人のことを探したり、いつの間にか好きな人を目で追ってたり……」

私「……」

先「なんだろうねー。なんかこう、胸がちょっとずつ痛くなってねー」

これが恋愛経験値の差でしょうか。

彼女が何を言っているのかさっぱり理解できません。

私の恋愛経験値をスカウターで計測したら「たったの５か。ゴミめ」と罵られてしまうかもしれません。

年齢が一つしか違わない先輩の恋愛経験値は、５３万くらいでしょうか。

まだ２回くらい変身を残している可能性もあります。

一回目はレズからバイセクシュアルに変身しました。

二回目はバイセクシュアルから完全なる異性愛者に変身するのでしょうか。

なら三回目は何に変身するのでしょうか。

年上女性の神秘性と可能性に想いを馳せると夢が広がりますね。

そう思っていたら彼女は困った顔をして前言撤回しました。

先「ごめん。人を好きになるってよく分からない」

素直でよろしい。

推定Ｃカップのおっぱいを撫でてあげたくなりました。

「人を好きになるとはどんなものか」という答えは、他人に聞くものではなく、自分で見つける物なのかもしれません。

私「私も分からないです……」

先「うん……」

話題が途切れてしまい、とても気まずい空気になってしまいました。

この空気を作ってしまった責任は私にあります。

先「……」

私「……」

先「最近、研究室のアルバイトしてる？」

私「してますよ」

先「本当に？」

私「なんで嘘をつかないといけないんですか」

嘘つきすーくんでもTPOは弁えますよ。

まあ、嘘ですけどね。

先「だって最近学内で見かけないなーと思って」

私「学部が違いますからね」

先「人に言えないようなアルバイトしてないよね？」

どうして私の周りにいる女性達は、勘が鋭い人が多いのでしょうか。

確かに最近は、大学内のアルバイトの他にも色々しています。

けれど、これは現実の知り合いに話すことはできません。

ここは得意のアメリカンジョークを模したブラックジョークでごまかしておきましょう。

私「人に言えないようなアルバイト……例えば妊娠検査薬のモニターですか？」

先輩に手をつねられてしまいました。

先「……みりんちゃん、本当は好きな人いるでしょ？」

私「……分からないです」

先「お姉ちゃんはみりんちゃんの味方だけど、好きな人を悲しませるようなことはしちゃダメだよ？」

私「…………はい」

返事をするのに躊躇してしまいました。

私のことを好きでいてくれる人を悲しませているかもしれないからです。

先「私もみりんちゃんに聞きたいことがあるんだけど……いい？」

私「年収ですか？」

先「なに、嫁にもらってくれるの？」

私「お断りします」

先「ひどーい」

私「略奪愛には興味がありません。素敵な彼氏がいるのに何言ってるんですか」

先「素敵な彼氏ね……最初に告白した時は気持ち悪いって言われたけど」

私「二回目にはokしてもらったじゃないですか」

先「みりんちゃんのおかげだよ。ありがとう。本当にありがとう」

先輩は頭を深々と下げました。

感謝されることの少ない人生を歩んできたので、なんだか気恥ずかしいです。

こういう時は話題をそらすのが一番です。

私「それで聞きたいことって何ですか？」

先「うん。みりんちゃんは、どうして……」




















先「どうして私がレズだってカミングアウトしても受け入れてくれたの？」





















私「先輩が同性愛者でも異性愛者でもバイセクシュアルでも関係ないですよ」

先「自分にとってはどうでもいいから？」

先輩は笑みを浮かべていじわるな質問をしてきました。

私「違いますよ。同性愛とか異性愛は人間性ではなくて性嗜好だからです」

先「うん？」

同性愛とか異性愛は人間の性嗜好の一つなのです。

公言する必要はありませんが、恥じる必要はもっとありません。

ＳＭプレイが好きな人、コスプレが好きな人、イカレた女の子が好きな人と同じです。

男が男に興奮しても女が女に興奮してもおかしくはないのです。

なぜならそれは性嗜好の一つですから。

異性愛者の中には、同性愛者を嫌悪したり非難したりする人がいます。

どうしてそこまで嫌悪したり非難したりするのでしょう。

同性愛者に狙われるのではないかと思うのなら、勘違い乙としか言いようがありません。

異性愛者に好みがあるように、同性愛者にも好みがあるのです。

無理矢理ヤってしまおうなんて歪んだ性嗜好を持つ人なんてごく一部です。

それに、無理矢理ヤってしまおうなんて歪んだ性嗜好を持つ人は異性愛者にもいますよね。

それとも前世で同性愛者にいじめられた記憶が残っているのでしょうか。

前世の敵を現世で討つなんて愚行としか言いようがありません。

そんな私は、現世にさよならしたい人間性の持ち主です♪

私「だから、先輩がレズでもマゾでも私は受け入れますよ！」

私は愛想笑いを浮かべて言いました。

先「……」

先輩はしかめ面で黙っています。

それから深いため息をついて悟ったように言いました。

先「みりんちゃんは変わってるね」

私「先輩ほどではありませんよ」

先「いやいやみりんちゃんの方が……」

私「いえいえ先輩の方が……」

ゆずり合いの精神を失った日本人の姿がそこにありました。

結局、人を好きになるとはどういったことなのか、私には分かりませんでした。

けれども彼氏と仲良くやっているらしい先輩は、今とても幸せそうです。

だから、人を好きになり人から好かれるのは良いことだと思います。

誰が誰を好きになろうと非難されることも中傷されることもない世の中になることを祈ります。

ついでに世界平和も祈っておきましょうか。

おしまい

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