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昔話『ネコ耳メイドとSF執事、そして安楽死探偵』25

前回のあらすじ

経済的に豊かな人が、必ずしも精神的に豊かとは限らない






客の来ない喫茶店で女子高生の人生相談を終えた私です。

私は人を信用しないくせに人と関わります。

相手を信用していなくても相手との信頼関係は生まれます。

客の来ない喫茶店にようやく人が訪れ始めた頃、私は後輩と雑談をしていました。

SF「あいつは好きと依存をごっちゃにしてるんすよ」

私「面倒くさい女だな」

せめて好きと憧れをいっしょにする小学生レベルに成長してください。

SF「先輩がそれを言いますか」

私「友達がそんなこと言っていいの?」

SF「あいつはこういうの気にしませんから」

私「へぇ」

SF「うちの親が元風俗嬢だと教えても変わらず友人関係を続けていますから」

私「それは単に風俗について知らないだけじゃないの?」

彼女は、子どもはコウノトリが運んでくるものと思っていてもおかしくありません。

まあ、それはないですよね。

ええ、あり得ません。

SF「そうかもしれません。キャバ嬢と風俗嬢の区別もできてないですから」

私「はーい。キャバ嬢と風俗嬢の違いを教えてくださーい」

私は純真無垢で健全な青少年を演じてみました。

SF「キャバ嬢が男と酒飲みながら話すだけなんて楽だなと蔑まれる商売、風俗嬢が男のチンポ咥えて金稼ぐなんて汚いと蔑まれる商売です」

私「なるほど」

どちらにしても蔑まれるのですね。

職業に貴賎なし、なんて言葉は嘘なのですね。

蔑むべき職業の人は、別にいると思うのですけどね。

SF「うちの母親がよく言ってました。男を落としたいなら胃袋とチンコを掴めばいいって」

私「……」

つまり食気と色気のコンビネーションで落とせということですか?

あながち間違っていないのではないでしょうか。

それにしても、つい数分前まで性的な物に嫌悪感を抱いて恐怖していた少女が、昼間から下ネタ連発ですか。

これが戦前の日本なら慎みを持ちなさいと教育されているところです。

古き良き大和撫子はいずこ、と懐古主義の日本男児なら思ったことでしょう。

果たして、今の日本人男性は大和撫子を求めるでしょうか。

時代が変われば物が変化します。

それと同じで、時代が変われば人が変化します。

昔は良かったけど今は駄目、と嘆くのではなく、昔は良かったけど今もいい、と時代の変化を肯定してみては如何でしょう。

例えば……。























着物って脱がせるのが面倒くさそうですよね。

その点、洋服はサッと脱がせることができてすぐに事が運べます。

ああ、でも着物だと下着を着けないからそれはそれでそそりますね。

ゆっくり時間をかけて着物を脱がしていくのも楽しそうです。

私が品のない妄想を繰り広げているうちに、話題は少しずつ変化していました。

SF「いい男の条件は、愛した女に幸せだと言わせることができる奴っすよ」

私「えー」

SF「なんすか。文句でもあるんすか」

私「なんか漠然としすぎ」

SF「だからいいんすよ。それを実現するのって難しいでしょ?」

そんなものでしょうか。

最近の女子高生が考えることは分かりません。

それともこれは、彼女独自の見解なのでしょうか。

愛した女に幸せだと言わせること……確かに難しそうです。

街頭調査で「あなたは今幸せですか?」と聞かれて何人の人が幸せだと答えるでしょう。

半分くらいですか?

それともそれ以下ですか?

「不幸ではないけど、幸福でもないかな」という中途半端な意見が多そうですよね。

日本人のイケナイところです。

イエスかノーか、はっきりとしていただきたいところです。

ちなみに私は、YES/NOマクラの正しい使い方を高校生の時になってようやく知りました。

無知って怖いですねー。

まんじゅうの次くらいに怖いです。

SF「そろそろ喫茶店に戻りますね」

私「うん。じゃあ私も」

SF「ああ、その前にメアド交換してください」

私「援助交際なら相手を選んだほうが」

SF「どんだけ卑屈なんすか。早く携帯出してください」

赤外線機能を使って数秒でお互いの連絡先を交換し、後輩はメイド喫茶に戻っていきました。

それから私は文化祭が終わるまで一人ぶらぶらとしていました。








そして文化祭の一日目が終了しました。

先に一般参加者が帰され、校内では後片付けが始められてしばらく経ちました。

明日も文化祭があるので簡単な掃除だけで済ませるのでしょう。

玄関から少しずつ生徒が出てきました。

皆楽しそうに笑っています。

私は校門前で偽妹ちゃんを待っていました。

きーちゃんと友くんには先に帰ってもらいました。

勘の鋭いきーちゃんは、なんとなく私がこれからすることに気づいていたようです。

しばらくして偽妹ちゃんがやってきました。

妹「おにいちゃん♪」

私「お疲れさま」

偽妹ちゃんが笑顔を浮かべて元気にかけ寄ってきました。

偽妹ちゃんだけの私の呼び名も、今となっては何の違和感も覚えなくなりました。

妹「待っててくれたんですか?」

私「うん」

妹「お姉ちゃんは」

私「先に帰ってもらった」

私は話があるからと、偽妹ちゃんを連れて駅とは反対方向に歩き始めました。

といっても土地勘がないのでそう遠くには行けません。

校舎を囲う壁に沿って歩いて行くと、ちょうど曲がり角がありました。

そこを曲がって立ち止まりました。

妹「話って何ですか?」

私(やっぱ可愛いなー)

私より背が低くて上目遣い気味に見られると、色々な感情に襲われます。

しかし、ここは感情を殺して伝えなければいけないところです。

私「私は偽妹ちゃんとは付き合えない」

妹「え?」

何を気持ち悪いこと言ってるの、と言われてもおかしくありません。

自分でも何を言えばいいか、何を言っているのか分かっていません。

告白をされたわけでもないのに、それ以前に相手を拒絶する訳ですからね。

思いあがりもいいところです。

私「これからは、偽妹ちゃんと距離をとろうと思う」

妹「……」

偽妹ちゃんはきょとんとした顔をしています。

胸が痛いです。

彼女を拒絶したからではありません。

自分の言動の痛々しさを痛感しているのです。

気持ち悪いです、自分。

穴に入って死んでしまいたい気分です。

妹「……おにいちゃんは私のことが嫌いですか?」

私「……嫌いではないよ」

そこは嘘でもいいから嫌いだと言っておけばよかったと今でも思います。

中途半端な優しさが人をダメにすることは、自分が一番分かっているのに。

妹「なら、問題ないです」

私「え?」

妹「分かりました」

私「……?」

何ですか、これ?

妹「私のことは嫌いじゃないんですよね?」

私「……うん。嫌いではないよ」

むしろ好きです。

偽妹ちゃんは可愛いですし、一緒にいると楽しいとも感じます。

妹「それなら、やっぱり問題ないです」

私「え? どういうこと?」

ちょっと現状が理解できません。

妹「今は付き合えなくても、これからもおにいちゃんのこと好きでいてもいいですよね?」

私「え?」

それはどうなのでしょう。

確かに付き合えないとは言いましたが、正式に告白されたわけでもないですから。

日本では思想言論の自由がー、自由恋愛で、人の想いは無限大で、あれあれー?

私「いいんじゃない……かな?」

妹「よかった」

彼女は本当にホッとしたような表所を見せると、私の両手をしっかり掴んで言いました。





















妹「また連絡しますね。××××さん♪」
















胸の奥がゾクゾクっとしました。

それから偽妹ちゃんは駅に向かって歩いて行きました。

残された私は、壁にもたれかかりながら自分の痛々しさや弱々しさに打ちひしがれていました。

拳を握って壁を殴っていたら壁が声を発しました。

まあ、嘘ですけどね。

壁の裏側に潜んでいた後輩がひょっこり顔を出してきました。

SF「恋は盲目って怖いっすね」

私「……」

SF「あいつとくっつくのが一番楽じゃないすか?」

私「……」

SF「あそこまで愛されてるのに、拒絶するのは依存されるのが怖いからですか?」

私「……」

SF「月額四万円で恋人になってあげましょうか?」

私「……」

SF「先輩……マジで目が死んでます」

私「……」

SF「先輩! せんぱーい!」

後輩からの呼びかけに答える気力がありませんでした。

人を信用できなくても人と関わることはできます。

相手を信用できなくても相手との信頼関係は生まれます。

それなら、人を信用できなくても恋愛は可能なのでしょうか。

おわり

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