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昔話『ふぁみキチ』2

この昔話は、イカレた人達の可愛さをお楽しみ頂くため、邪魔にならない程度の差し障りのない会話をお楽しみいただく昔話です。

こんなファミリーレストランの客は、日本刀を持ったお姉さんに斬られてしまえ。

先「今日はヨシナガさんいないんだぁ」

私「誰ですか?」

先「お気に入りの店員さん。背が高くて、おっぱいが小さくて、茶髪のかわいい女の子」

私(ヨシナガさん逃げて)

店員さんをテイクアウトしようとする。

先「どうしてファミレスに女体盛りってないんだろうね」

私「ファミレスに何を求めてるんですか」

メニュー表にない料理を注文したがる。

私「おかわりもらってきますけど、どうします?」

先「あ、私のもお願い。白くて絡みつくような喉越しの……」

この白い液体の正体はナニ!?



先「料理美味しいね」

私「そうですね」

日本の外食産業の料理はすごいですよね。

労働条件は……ゲフンゲフン

先「みりんちゃんのも少し食べさせて」

私「どうぞ」

私は皿を先輩の方へ差し出します。

先輩はスプーンでそっと掬って食べました。

先「うん。こっちもおいしい!」

私「よかったですね」

先「みりんちゃんも私の食べる?」

私「いいんですか?」

先輩は無言でこちらに皿を差し出してきます。

私はフォークを使って何とか掬って食べました。

私「ありがとうございます。おいしいですね」

先「ねー」

ああ、なんだか心休まりますね。

でも、そんな心休まる一時に一石を投じたくなるのが人間ですよね。

私だけですか?

そんなんだから恋人ができないとおっしゃる方がいるかもしれません。

私「でも、先輩の料理の方がおいしいですよ」

先「ありがとー。そんなことを言ってくれるのはみりんちゃんだけだよ」

先輩は笑みを浮かべています。

その笑顔に癒されるのは私だけではないでしょう。

先「みりんちゃんは最近何か作った?」

私「最近作った料理は……かぼちゃの煮物と肉じゃがですね」

先「おふくろの味を求めてるの?」

私「あはは。違いますよー」

料理に求める物は美味しさと満腹感です。

それ以外は別の物に求めましょう。

先「今度は何が食べたい? みりんちゃんの好きなものを作ってあげる」

こんなにも心優しい女性がかつて私の周りにいたでしょうか。

その優しさだけで胸がいっぱいになりますね。

しかし気をつけなければいけません。

優しくしてもらった経験がない人間は、ちょっと優しくされるとその人に恋してしまうと言いますからね。

私にとって彼女は先輩であり、偽姉であり、友人なのです。

それでも私の好きなものを作ってくれるというなら作ってもらいましょう。

人の厚意には甘える時と甘えない時がありますからね。

えーと、何がいいでしょうか。

何でもいいと言われると逆に迷ってしまいますね。

ここで間違っても「お味噌汁」と言ってはいけないことぐらい、人生に迷っている私でも分かります。

私は迷いに迷った挙句、同じく味噌を使った料理を作ってもらうことにしました。

私「サバの味噌煮」

先「好きなの?」

私「好き」

先「食べたいの?」

私「食べたい」

先「幼児退行したみたいなしゃべり方ね」

私「かたじけない」

今度は時代を逆行したようです。

私「でも、先輩の家でご飯を食べられるのもこれが最後かもしれませんね」

先「え、なんで?」

私「なんでって……」

先「みりんちゃん」

私「はい」

先「呼んでみただけ♪」

私「イラッとするんでやめてもらっていいですか?」

なまじ可愛いので余計ムカつきます。

彼氏持ちという要素はむしろ燃えます。

まあ、略奪愛の趣味はありませんけどね(・∀・)ネー

先「みりんちゃん」

私「何ですか」

先「今好きな人っている?」

私「……いません」

先「みりんちゃんにも好きな人ができるといいね」

私「そうですね」

先「そこは即答でお姉ちゃんみたいな恋人が欲しいって言うとこでしょ」

私「即答でそんな長文言えるわけないでしょう」

それから私達は黙って料理を食べました。

料理を三分の二ほど食べてから私は、思い出したように言いました。

私「そういえば最近の大学生は、パタリロを知らないみたいですよ」

先「そうなの? それって絶対人生損してるよ」

いや、それはどうでしょう。

それからまた黙って料理を食べ始めます。

私が先に食べ終わり、ドリンクバーのおかわりを取りに行きます。

席に戻ってきたら先輩もちょうど食べ終わったところでした。

あったか~い飲み物でまったりしながら談笑していると、先輩が言いました。

先「みりんちゃんは長生きするタイプだよね」

私「えー」

先「なに、嫌なの?」

私「はい」

できることなら早く死にたいです。

叶うなら今この場で死ぬことも厭いません。

おもちゃ売り場の前で泣きじゃくる子どものように私は死を望みます。

葬儀屋の前や仏具屋の前で「やだーやだー生きてるのやだー」と一時間粘ってみましょうか。

この場合、営業妨害になるのか販売促進になるのか分かりませんね。

まともな思考回路をお持ちの方なら答えは簡単ですよね?

私「そういう先輩はどうなんですか?」

先「私? 私は長生きするタイプだよ。だってみりんちゃんのお姉ちゃんだからね」

私「いや、その理屈はおかしい」

まったくもって長生きする基準がわかりません。

みりんは体にいいのかしら、とワイドショーを見ながら昼食を食べる主婦の方にお尋ねしたいところです。

あらやだ奥さん、みりんよりもしょうゆですよ。

なんといっても「さしすせそ」のせを担当していますからね。

料理人見習いが「さ」をマスターした後に必ず言うのです。

「“さ”は倒した。だが、本当の戦いはこれからだ」

きっと第二、第三の調味料が後から後から料理人見習いを苦しめるのですよ。

しょうゆをガブ飲みすれば健康になれると根拠も裏付けもない情報を流してみましょうか。

Twitterあたりに流しておけばフォロワーさんがリツイートしてくださるのではないでしょうか。

しょうゆガブ飲みなう、と。

先「私は大山のぶ代さんのドラえもんしか認めない!」

私「えぇ~」

先「なに、みりんちゃんは今の偽ドラえもんを認めるっていうの!?」

私「今の子どもたちにとっては、今のドラえもんが当たり前になってますからね」

今のドラえもんを否定する資格が私達にあるでしょうか。

いいえ、ありません!!

先「えー、でもさー」

先輩はなかなか納得いかないようです。

アニメの声優の世代交代は仕方ないと思うのですよ。

アニメ業界のことはよく知りませんけどね。

私「先輩にとって日曜六時半のテレビアニメは何ですか」

先「えと、サザエさん?」

私「そうです。サザエさんです」

先輩はそれがどうかしたのと言いたげです。

私「先輩はわかめちゃんを知っていますよね」

先「ああ、あの見せパン痴女」

私「将来が心配ですよね。しかし今は彼女の性的嗜好についてはどうでもいいのです」

先「それがどうしたの?」

私「ワカメちゃんも声優変わってますけど、それはいいんですか?」

先「……」

私「……」

先「……替わった?」

私「替わってます」

それから先輩は、指折りで数を数えながら昔を思い出していました。

私は一向に齢を取らないあさひが丘の住人の秘密について考察しました。

ちなみに私は『サザエさん』よりも『いじわるばあさん』の方が好きです♪

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