忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



本『青空の卵』 坂木司

『青空の卵』 坂木司 創元推理文庫



僕、坂木司には変わった友人がいる。

引きこもりのコンピュータのプログラマー、鳥井真一という。

僕といっしょなら最低限の外出はできるものの、人間嫌いなところがあるのでやはり変わっている。

鳥井が極度の外出嫌いになったのには理由がある。

一つは、母親の不在。

何かに縛られることを極端に嫌った彼の母親は、当初身ごもった子どもを夫に内緒で堕ろそうとしていたらしい。

常識人だった父親は離婚届を突きつけ、母親は子どもが生まれるやいなや、すぐに消えた。

そしてもう一つはありきたりな話だが、いじめが原因だった。

僕が彼と出会ったのは、中学生のとき。

同じクラスにいた彼のことを、僕はずっと気にしていた。

いつも毅然として、何を考えているのか分からず、群れない獣のような印象を持つ彼に、僕はなんとなく憧れていた。

僕は凡庸な家庭に育った型通りの人間のためか、「異能」や「奇行」の才を持つ人に惹きつけられる。

鳥井真一は、そんな僕の前に現れた「理想の友達」だったのだ。

彼へのいじめがエスカレートしていき、卒業が危ういとなったところで僕は彼に向かう決心をした。

そして僕は彼と友達になり、大人になった現在でも付き合いが続いている。

卑怯なタイミングだと思ったし、胸に刻みつけた罪悪感は今でも忘れていない。

複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな彼を外の世界に連れ出そうと、僕は日夜がんばっている。

ある日、いつものようにスーパーで買い物をするという口実で鳥井を連れだした。

なじみのスーパーで僕らは、徳用缶詰が積み上げられた狭苦しい缶詰コーナーを歩いていく。

その時、向こうから一人の女性が歩いてくるのが見えた。

狭い通路なのに、必要以上に端に寄っている。

彼女は僕と鳥井の中間地点で何かにつまずき、身体のどこかを商品にぶつけてしまう。

その一秒後には缶詰の山が崩れ落ちてきた。

とっさに彼女の手を引いて助けたものの、その女性は美しい顔で憎しみと苛立たしさをはらんで手を振り払われた。

それから店員を叱責し、その場を去っていった。

もう二度と会わないと思っていたが、僕らはきっかり一週間後に再び彼女と出くわすことになる。

さらに三度目に会った時には……。【夏の終わりの三重奏】

双子の尾行者に悩まされる盲目の少年の話【秋の足音】

謎の贈り物に悩まされる歌舞伎役者の話【冬の贈りもの】

親を捜す幼い子どもを助ける話【春の子供】

知人の小料理屋開店のお祝いにあるお菓子を持って行く話【初夏のひよこ】

料理が趣味の鳥井の食卓で、僕は身近に起こった様々な謎を問いかける。

鋭い観察眼を持つ鳥井は、何気ない言葉や行動からいとも簡単に解き明かす。

謎を解き、人と出会うことによってもたらされる二人の成長を描いた感動の著者のデビュー作。

ひきこもり探偵シリーズ第一弾!(シリーズ全三作)

関連作品

本『青空の卵』

本『仔羊の巣』

本『動物園の鳥』

ブログランキング・にほんブログ村へ
blogram投票ボタンブログランキングTwitterボタン




拍手[0回]

PR


この記事に対するコメント

無題

これ、ドラマとしてやっている(た?)ようですね。

>>引きこもりのコンピュータのプログラマー
ここだけつまみぐいしてしまうと……
現在の私に少しばかり近いですね(汗)

【2012/10/18 22:15】光一 #5331d7ba51(URL)[編集]

無題

こんばんは、光一さん。
コメントありがとうございます。

この本を読んだのは二年ほど前で、私も記事を書くまでドラマ化していたことに気づきませんでした。

確かに近いものがあるかもしれませんね。鳥井真一は料理が趣味です。光一さんも気分転換で料理を始めてみてはいかがですか?

【2012/10/18 22:53】three #7dd1f3efa1()[編集]

この記事に対するコメントの投稿


この記事に対するトラックバック

トラックバックURL