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2012/07/28 本『東雲侑子は短編小説をあいしている』 森橋ビンゴ
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2012/05/13 本『ヴィーナスの命題』 真木武志
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2012/04/26 本『生きるか!死ぬか!バイオレンス・ハニー・ビー』 三月さくら
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2012/01/04 本『殺人鬼フジコの衝動』 真梨幸子
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本『ただ、それだけでよかったんです』 著・松村涼哉 絵・竹岡美穂

『ただ、それだけでよかったんです』 著・松村涼哉 絵・竹岡美穂 電撃文庫



第22回電撃小説大賞<大賞>受賞作!

壊れてしまったこの教室で、一人ぼっちの革命がはじまる――。

頂点に輝いた空前の衝撃作!!

ある中学校で一人の男子生徒Kが自殺した。

『菅原拓は悪魔です。誰も彼の言葉を信じてはいけない』という遺書を残して――。

自殺の背景には“悪魔のような中学生”菅原拓による、Kを含めた4人の生徒への壮絶なイジメがあったという。

だが、Kは人気者の天才少年で、菅原拓はスクールカースト最下層の地味な生徒。

そして、イジメの目撃者が誰一人としていなかったこと。

彼らの接触の証拠も一切なかったことなど、多くの謎が残された。

なぜ、天才少年Kは自殺しなければならなかったのか。

「革命は進む。どうか嘲笑して見てほしい。情けなくてちっぽけな僕の革命の物語を――」

悪魔と呼ばれた少年・菅原拓がその物語を語り始めるとき、そこには誰も予想できなかった、驚愕の真実が浮かび上がる――。
 
圧倒的な衝撃、逃れられない感動。読む人全てを震わせ4,580作品の頂点に輝いた衝撃作。


パパンがパン。だーれが殺したK。だーれが殺したK


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本『雨にも負けず粗茶一服』 松村栄子

『雨にも負けず粗茶一服』 松村栄子 ポプラ文庫ピュアフル 



友衛遊馬、18歳。

弓道、剣道、茶道を伝える武家茶道坂東巴流の嫡男である。

しかし……。

「これからは自分らしく生きることにしたんだ。黒々した髪七三に分けてあんこ喰っててもしょうがないだろ」

捨て台詞を残して出奔。

向かった先は、大嫌いなはずの茶道の本場、京都だった――。

個性豊かな茶人たちにやりこめられつつ成長する主人公を描く、青春エンターテイメント。

京都に出奔した弱小武家茶道「坂東巴流」家元Jr.の友衛遊馬。

お茶が嫌いなはずだったのに、宗家巴流の先生・志乃の家に寄宿し、お茶菓子作りが趣味の坊主・不穏や公家装束を着こなす高校教師・今出川幸麿など、怪しげな茶人たちとの交流は増すばかり。

そうこうするうち、宗家巴流の後継問題に、あれよあれよと巻き込まれ……。

芥川賞受賞作家が書く大好評青春娯楽小説、感涙の大団円へ。


破天荒な主人公の青春や成長など最初から最後まで楽しませてくれる。

茶道のこともわかりやすく、京都の町並みも見えてくるように描かれている。

とても良かった。


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本『風俗のヘンなお客さん』 桃山みか+風俗研究会

『風俗のヘンなお客さん』 桃山みか+風俗研究会 文庫ぎんが堂



風俗嬢500人に聞いたビックリ性癖、大集合!

SM、放尿、逆レイプ……10年前なら珍しかったマニアックなプレイも、気軽に楽しめちゃう時代。

そのせいで、今や風俗店には、とんでもないお客が増えているんです!

やたらとカラダのパーツにこだわる。

目の前の女体に触れもせずひたすら目で楽しむ。

ありえない道具を持ち出す――。

風俗嬢たちが見た、言われた、プレイした、スゴい性癖の数々。

言っときますが、ぜんぶホントにあった話です。

笑う? 引く? それとも思わずうなずいちゃう?


世の中に自称“変態”は多いものの、この本には誰も見た聞いたことがないような“変態”たちがたくさん出てきます。

基本的に1ページに1つの体験談。

体験した風俗嬢の主観で文章が書かれています。

印象に残ったのはうどんプレイです。

某製麺工場の従業員がホテルの浴槽にうどんを大量に入れます。

その中に風俗嬢といっしょに入ってぬちゃぬちゃ入るのが楽しいらしいですが……(´Д`;)

食べ物で遊ぶ人って最低じゃないですか?

あとは、本物ドMの人と偽物ドMの人の見分け方についてもおもしろかったです。

有無を言わさず性器触って、ベッドに押し倒して、相手の携帯電話を奪い取ってこう脅すようです。

「あなたの親しい人に、楽しんでいる声を聞かせてあげましょうか?」

本物なら喜びますが、偽物なら怒るそうです。

なぜか納得させられました、なぜか……(・∀・)

星の数ほど変態はいるんだなぁと思いました。

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本『ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~』 三上延

『ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~』 三上延 メディアワークス文庫 

不思議な事件を呼び込むのは一冊の古書。



主人公・五浦大輔。

大学を卒業して今年で二十三歳、就職活動中。

小さい頃に祖母の部屋に勝手に入り、本を触ったことで殴られるほど怒られたことをきっかけに本を読むことができなくなった。

本を開くと胸の鼓動が高くなり、手のひらに汗をかき、しまいには気分が悪くなってくる。

恐怖症といってもいいかもしれない。

その祖母が亡くなって一年あまり後、大輔は大船の実家で祖母の遺した古書を整理していた。

その中の一冊、夏目漱石『それから』の中に夏目漱石のサインを見つける。

本物か偽物か判断するため、彼は北鎌倉駅近くにある古書店のことを思い出す。

かつて見かけた美しい女性に会いたいという想いもあり、そこに本を持って行くことにした。

鎌倉の片隅でひっそりと営業している古本屋「ビブリア古書堂」。

しかし店長はケガで入院中、本の買い取り依頼なら直接病院に行ってほしいということだった。

その言葉に従って大輔が病室に向かうと、髪の長い女性が眠りこけていた。

古本屋のイメージに合わない若くてキレイな女性店主、篠川栞子。

残念なのは、初対面の人間とはまともに口をきけないほどの人見知り。

接客業を営む者として少し心配になる女性だった。

しかし古書の知識は並大抵ではなく、本のことになると途端に饒舌に語ることができる。

本に対して人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも。

彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきてかのように解き明かしていく。

これは“古書と秘密”の物語。

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つづきをよむ?

本『東雲侑子は短編小説をあいしている』 森橋ビンゴ

『東雲侑子は短編小説をあいしている』 著:森橋ビンゴ イラスト:Nardack ファミ通文庫

正直な話、もう認めざるを得ないと思う。

俺は――東雲侑子の事が好きなのだ。

コミック版をこちらで試し読みできます!



何事にも無気力、無関心な毎日を過ごす高校生、三並英太。

私立央生高校は、生徒全員が部活動に所属しなければいけない。

それは三並英太も逃れられることができない校則だ。

しかし、図書委員会に所属すれば面倒な部活動に所属する必要がないという。

週2のカウンター業務と週1の会合に参加するだけで済むのだ。

彼が担当する水曜日と金曜日の担当はもう一人いる。

同じクラスの目立たない女子生徒、東雲侑子。

昼休みも授業中も暇さえあれば本を読んでいる、そんな人間だ。

彼女の熱のない静けさに、自分の空虚さに似たものを感じていた。

そんなある日、偶然彼女の秘密を知ってしまう。

東雲侑子は――小説家だった。

短編小説しか書かない作家で、長編小説は書けないという。

しかしそれは経験がないからであって、編集の人からは長編小説を書くように依頼されている。

自分との違いを思い知らされた英太だが、彼女から思いも寄らないお願いをされる。

「私と、付き合ってほしいの」

東雲侑子は恋愛小説を書くために恋愛経験を必要としていたのだ。

こうして二人は「付き合う」ことになった。

早熟な少年少女に贈る、もどかしく苦いラブストーリー。

関連リンク

本『東雲侑子は短編小説をあいしている』

本『東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる』

本『東雲侑子は全ての小説をあいしつづける』

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つづきはネタバレ注意

本『でかい月だな』 水森サトリ

『でかい月だな』 水森サトリ 集英社文庫

海岸で月を見るときは、背後を確認してください。



ぼく(沢村幸彦)と友達の綾瀬涼平は、夜の海岸にやってきていた。

夜も遅くなってきていたので、ぼくは帰ろうと促すが、綾瀬は首を縦に振らない。

十三歳、まだ中学生のぼくらだ。

帰りが遅くなれば家族だって心配するのに、綾瀬はまだ帰ろうとしない。

「でかい月だな」

そっぽを向いたまま綾瀬がぽつりと言った。

ぼくもいっしょに夜空を見上げると、そこにはでっかい○が姿を現している。

月を見ながら考え事をしていると、胸に衝撃を感じ、身体が宙に舞った。

ぼくを混乱と哀しみに突き落とし、あいつは町から消えてしまった――。


三日間ほどの記憶がない。

目が覚めたとき、そこは病院のベッドの上だった。

あの夜、ぼくは崖から蹴り落とされて、崖を転げ落ちた。

そして右足が金属のガラクタに突き刺さり、転落が止まったらしい。

何時間にも及ぶ手術によって命は現世に、右足は身体に繋ぎ留められた。

だが、ぼくは大好きなバスケができない身体になってしまう。

「どうして蹴ったのかわからない」

綾瀬涼平は、そう供述したという。

ぼくの病室には、たくさんの見舞客がきた。

そして口々に綾瀬の悪口を言って帰っていく。

だがぼくは、綾瀬のことを庇う発言しかしなかった。

二度目の手術やリハビリなどで一年が経った。

以前の同級生は、三年生に進級している。

ぼくは、一年遅れの二年生として学校に通い始めた。

平凡で平和な毎日をおくっている。

だが退院してからぼくは夢を見るようになった。

やつらのやってくる悪夢だ。

そんな時、ぼくの目の前に現れた天才科学少年の中川と邪気眼少女のかごめ。

そしてぼくの周囲で奇妙で不可解な現象が起こり始める……。

第十九回小説すばる新人賞受賞作

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本『ヴィーナスの命題』 真木武志

『ヴィーナスの命題』 真木武志 角川文庫



傑出した才能と挑戦に、綾辻行人氏も唸った。

17歳の探偵たちの揺らめきに長門有希も反応した。

青春ミステリにして、誰にもまねできない傑作。

夏休みに入って間もない火曜日の朝、学校のグラウンドで生徒の死体が発見された。

校舎の窓から転落したと思しき状況。

自殺か他殺か?

それとも学校に伝わる呪いの発動か!?

科学部と園芸部の二人の部長、美少女タレント、生徒会長……。

17歳を生きる“探偵”たちの仮説が交錯するまばゆいばかりの一週間。

同級生の死をめぐる推理の迷宮。

若者たちがあぶりだす現実の解とは――!?

犯人は、女神とは!?

第二十回横溝正史ミステリ大賞最終選考落選、しかし……間違いなく傑作!

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本『生きるか!死ぬか!バイオレンス・ハニー・ビー』 三月さくら

『生きるか!死ぬか!バイオレンス・ハニー・ビー』 三月さくら 文芸社



ハニー・ビー国の志願兵であるポールとマロンは、前線基地で、出撃前だというのに言い争いをしていた。

そして出撃命令が下り、二人は手柄を立てようとタイガー・ビー軍と激しい銃撃戦に臨んだ。

しかし、数時間で負けると直感したポールはマロンと共に敵前逃亡する。

なんとか逃げきった彼らは、国境近くの民家までやってきた。

そこは、女主人オアシスが経営している酒場だった。

彼女にボウフラ入りの水をごちそうになり、タイガー・ビーの兵士が来たときはかくまってもらった。

この時、ポールは、すすけた顔でみすぼらしい格好をしたオアシスに興味を持ち始めていた。


ポールとマロンは、負けたままでは終われない、どうにかしてタイガー・ビーに一矢報いたい、そう考えていた。

そこで実力主義の空軍部隊に入隊し、前線で手柄をあげることを思いついた。

そんなある日、移動商人ジョンは、ポールの生き別れの妹リリアンが居場所を知る。

しかし、そこは牙族という恐ろしい怪物がいる場所だった。

ジョンは、死を覚悟してリリアンの救出に向かい何とか助け出すことに成功する。

しかし、彼女はポールと一度も会えないまますぐにブラック・ビーのロボット兵に連れ去られてしまった。

それについて全く知らされぬままポールとマロンは、空軍入隊初の出撃命令が下る。


ポールとマロンは、初出撃でいくつもの敵機を撃ち落とし中尉にまで昇進した。

そして再び出撃命令が下り、今度は前線ではなく、ブラック・ビーの偵察に向かう。

ブラック・ビー城に潜入した二人は、妹リリアンと本物そっくりのロボットに出会う。

危うくロボットに殺されるところだったが、本物のリリアンを連れ帰る。

彼らが脱出した後、ブラック・ビーの城は爆発し何もかもなくなってしまった。


さらに敵国のタイガー・ビーも本拠地の火山が噴火寸前で内乱が起こり、戦争どころではなくなった。

彼らに一時の平和が訪れた。

しかし、ポールだけは落ち着かなかった。

戦争が好きなわけではない。

タイガー・ビーの本拠地にいるオアシスが忘れられずただ心配なのだ。

ポールは彼女を助けるため、噴火寸前の火山へと向かう。

ファンタジー世界で繰り広げられる愛と冒険のソフト・バイオレンス活劇。

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衝撃のデビューって言うけど、これって自費出版じゃないの?

文芸社だし。

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本『いちご同盟』 三田誠広

『いちご同盟』 三田誠広 集英社

いちご同盟の「いちご」の意味。

その意味を知りたいなら読むしかない!
 


中学校の音楽室でピアノを弾いていた北沢良一。

そこに野球部のエースで学校中の人気者の羽根木徹也が現れた。

彼は命令する口調でお願いをしてきた。

そのお願いとは、野球部の試合をビデオカメラで撮ってほしいというもの。

その日は予定があったので断る良一だが、徹也は真剣な目つきでこう言った。

「頼む。ただの試合じゃないんだ。こいつには、人の命がかかっている」

声にも、表情にも、熱意がこもっていたのを感じた良一は、そのお願いを了承する。

お願いされたとおり試合のビデオを撮った。

そして翌日、良一は徹也に連れられて病院にやってきた。

そこで良一は、重症の腫瘍で入院中の少女・上原直美に出会う。

直美はとても明るい声で楽しそうに話した。

彼女がどんな病気にかかっているのか、その時の良一は分からなかった。

徹也は野球の試合に全力を尽くして直美を力づける。

良一は想いをうまく言葉にできないけれど、直美の話し相手として病院に行くようになっていた。

あるとき良一は、彼女に自殺した小学五年生の男子の話をした。

その子は自殺したマンションの壁にこう書いていた。


むりをして生きていても
どうせみんな
死んでしまうんだ
ばかやろう


それから数日経ったある日、直美は良一に言った。

「あたしと、心中しない?」

ガラス細工のように繊細な十五歳の少年少女。

恋愛や友情、想いや迷い、そして生と死を描いた長篇。

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本『少女ノイズ』 三雲岳人

『少女ノイズ』 三雲岳人 光文社文庫



欠落した記憶を抱え、殺人現場の写真を撮ることに執着する青年・高須賀克志。

心を閉ざして、理想的な優等生を演じ続ける孤独な少女・斎宮瞑。

進学塾の屋上で出会った二人が見つめる恐ろしくも哀しい事件の真実とは――。



Ⅰ Crumbling Sky

少年は数人の同級生とともに、学校の代表としてセレモニーに参加していた。

前に立っている男のせいで肝心の彫像が見えないことが不満だ。

少しでも彫像の見える場所に移ろうと、少年が静かに足の位置をずらした。

目の前の男の大きな背中が、ぐらり、と揺れたのはその直後だった。

見上げた男の太い首が、不自然な形に曲がって痙攣していた。

何かがぶつかったのだと思い、頭上を見上げた。

しかしそこには、ただ青い空だけが広がっている。

事の発端は皆瀬梨夏だった。

あの日、彼女が僕に声をかけてこなければ、あの事件を思い出すことはなかっただろうから。

大学の特任准教授・皆瀬梨夏は、進学塾のアルバイトを紹介してきた。

お金が必要だった僕は、そのアルバイトを受けることにする。

僕が担当する塾生は、斎宮瞑(いつきのみや めい)という高校二年生の女の子だった。

しかし僕の仕事は、彼女に勉強を教えることではなく、彼女を監督し世話することだった。

瞑は一度も授業に出席することがなく、いつも塾内をうろついているらしい。

僕は塾内を歩き回り、彼女がよくいるという立ち入り禁止の屋上に赴く。

するとそこには、両脚を無造作に投げ出した姿で、セーラー服の少女が座っていた。


Ⅱ 四番目の色が散る前に

その夜、僕は廃業したレストランの跡地を訪れていた。

川沿いの国道脇にあるファミレスだった。

人を寄せ付けない結界のような廃墟。

そこは理想的な場所だった。

殺人者にとっての最高の狩猟場。

この廃墟で、女子高生の変死体が発見されたのは四日前のことだ。

僕はファインダーを覗きこんだ状態でシャッターを切る。

青白く発酵したフラッシュが高校の制服を着た少女を照らした。

その子は僕に向かって「先生?」と問いかけた。

それが彼女――納戸愛美との出会い。

第一の犠牲者、笹沼茜が殺されて四日目の夜のことだった。

そのことを瞑に話すと、どういうわけか彼女は冷ややかな目でこちらを見てきた。

そして笹沼茜が殺害された事件についても話す。

笹沼茜はヒモのようなものを使って絞殺され、右腕を切断されていた。

瞑はそれを聞いて「ABC、でなければいいけど……」と呟いた。


Ⅲ Fallen Angel Falls

虚空に近い場所に彼女はいた。

彼女の背後にはなにもなかった。

高層ビルの屋上の端。

鉄柵を乗り越えた向こう側が、彼女の立っている場所だった。

小柄で儚げな雰囲気の女子高生だ。

僕の存在に気づいた彼女は少し驚いたが、僕の素生を聞いて納得していた。

自殺を止めるでもなく促すような発言をしたというのに、斎宮瞑の講師であるというだけで。

浦澤華菜。

制服の袖口からのぞく白い腕には、一筋の傷痕が残されていた。

それから何週間か経ったある日、塾講師が集まる談話室で雑談をしていた。

話題にあがったのは何日か前に起こった駅の事故である。

駅のホームの階段から女子高生が転落し、軽い怪我をしてしまったという。

被害者は塾の生徒で、ただの事故ではなく、何者かに突き落とされた事件ではないかとも言われている。

その転落事故の被害者というのが浦澤華菜だった。

彼女はそれだけでなく、塾でも出血する傷を負ってしまう事故に遭う。

彼女は自身のことを「呪われている」と称した。

僕がその子のことを瞑に話すと、興味がなさそうなふりをして不機嫌になっていた。


Ⅳ あなたを見ている

「幽霊――だったんです」

躊躇いがちに何度も視線を泳がせた後、森澤恵里はそう告白した。

そして僕の反応を待つように沈黙した。

塾の進路相談室だった。

担任講師に勧められて僕のもとにやってきた彼女は、すがるような気持ちで詳しい話をする。

森澤恵里は、ずっと以前から、一人の男につきまとわれていたのだという。

中学生の頃か、もしかしたらその前から。

彼女が物心ついたときにはすでに、その男は恵里の周りに出没していたらしい。

見知らぬ男だったという。

彼が彼女に要求してくることはなく、ただ見つめられたりあとを尾けられたりというだけだった。

しかし今年の夏ごろには家の周辺に出没するようになり、ついには家に上がり込んでいたという。

恐怖のあまり、彼女は咄嗟に近くにあった小刀で男を刺していた。

やがて男の腹から赤い血が出始め、事の重大さに気付いた彼女は部屋に閉じこもった。

ようやく気持ちが落ち着いた頃、男の死体のことやそろそろ帰宅する母親のことが気にかかり、部屋を出た。

男を刺した部屋に戻ってみると、そこには死体はおろか、すべての痕跡がなかった。


Ⅴ 静かな密室

燃え盛る炎の中で、僕はごく自然に死を覚悟した。

あまりにも呆気なさ過ぎて実感が湧かない。

心残りなのは、ひとつだけだ。

できることなら、もう一度だけ会って話がしたかった。

あの雪の日にいなくなってしまった彼女に。

瞑……

目が覚めると病院のベッドの上だった。

最初に病室を訪れたのは警察関係者で、事故原因を知るために僕の元を訪れたのだという。

しかし実際は違っていた。

名上遥香を殺した最有力の容疑者として僕は挙がっていた。

僕が容疑を晴らすことができず困っていると、乱暴にドアが開けられ、病室にかけこんでくる影が一つ――。

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本『万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ』

『万能鑑定士Qの事件簿Ⅰ』 松岡圭祐 角川書店



東京23区中のガードレールを侵食していく不気味な和風のシール、通称“力士シール”。

誰が、何のために貼ったのか?

若き週刊雑誌記者・小笠原悠斗は、謎を追い続け、解明するために鑑定家を探していた。

そんな時見つけたのが『万能鑑定士Q』という一際目を引く肩書。

その事務所に行ってみると、猫のように鋭く魅惑的な瞳を持つ若い美女と出会う。

凜田莉子、23歳――。

瞬時に万物の真価・真贋・真相を見破る彼女こそが「万能鑑定士」だった。

莉子と付き合っていくうちに、小笠原は彼女により一層惹かれていく。

高校時代の成績はほぼオール1、信じられないほどの天然キャラで劣等生だった莉子。

彼女はいつ、どこで、そのような技術や知識を身に付けたのか。

面白くて知恵がつく。人の死なないミステリ。

万能鑑定士Qシリーズ第一弾!

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つづきを読む?

本『殺人鬼フジコの衝動』 真梨幸子

『殺人鬼フジコの衝動』 真梨幸子 徳間文庫



この小説は、ある女の一生を描いたものである。

女は「殺人鬼フジコ」と呼ばれた。

少なくとも十五人を惨殺した、殺人鬼。

この小説を書き上げたのは、ある女性だ。

彼女がこれを書き上げたのは、三年前のことである。

ハルシオンを百五十錠を飲んで自殺をはかった彼女は、奇跡的に一命を取り留め、後遺症を抱えながらベッドの中でこれを書き上げた。

そして“了”の文字を書き込んだその三日後、果てた。

彼女にとって最初で最後の小説だ。

一家惨殺事件のただひとり生き残ったフジコ。

全ての過去を忘れ、新たな人生を歩み始めた十一歳の少女。

「決して母のようにはならない」

そう自分に言い聞かせて生きていくのだった。

だが彼女の人生はいつしか狂い始めた。

「人生は、薔薇色のお菓子のよう」

呟きながら、またひとり彼女は殺す。

何がいたいけな少女を伝説の殺人鬼にしてしまったのか。

最後の一行を読んだ時、あなたは著者が仕掛けたたくらみに戦慄し、その哀しみに慟哭する。

つづきはネタバレ注意

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つづきを読む?

本『風が強く吹いている』 三浦しをん

『風が強く吹いている』 三浦しをん 新潮社

正月になったら思い出してください。

   



寛政大学文学部四年の清瀬灰二は、行き着けの銭湯「鶴の湯」で左官屋と話をしていた。

清瀬が住んでいるのは、寛政大学の寮「竹青荘」

現在、彼を含めて九人の寛政大学生が住んでいる。

彼にとってこれは最後の年で、最大のチャンスだった。

どうしてもあと一人必要だ。

夜道を左官屋と一緒に歩いていると背後から入り乱れた足音と怒声が遠く聞こえてきた。

振り返ると正確なストロークでこちらに向かって走ってくる男がいた。

その男はみるみるうちに二人に迫り、若い男だと視認したときにはすぐに脇を通り抜けて走り去っていった。

息の乱れが全くない走りを見せる青年だった。

そのあとをかなり遅れて、コンビニのエプロン姿の男が追いかけていく。

清瀬は左官屋の自転車を借りて、青年を追った。

清瀬は自分がずっと探していたのは、あいつだと感じた。

清瀬が男に追いつくとこう言った。

「走るの好きか?」

その男は、今年寛政大学に入学する一年生の蔵原走だと言った。

彼は万引きした理由をアパートの契約金としての仕送りを全て使ってしまったからと言った。

そこで清瀬は家賃三万円の学生寮「竹青荘」に入るように勧める。

走は、あまりの安さに驚きながらもそこに住むことを決めた。

竹青荘にやってくると走は、一風変わった住人たちを紹介される。

まったく同じ顔をした双子の兄弟、ジョータとジョージ。

浪人と留年を繰り返して二十五歳のヘビースモーカー大学三年生、ニコチャン。

司法試験に合格し、音楽好きのユキ。

黒人だが陸上経験がなく、理工学部の国費留学生のムサ。

僻地出身で故郷に帰るのに二日かかる神童。

クイズ大好きで、クイズ王の異名を持つキング。

漫画大好きで膨大な漫画コレクションを持つ王子。

そして大家さんが飼っている愛されるバカ犬ニラ。

九室しかない竹青荘に住人が十人入ったとき、清瀬灰二の企んでいた計画が実行されることになる。

ある飲み会の席で清瀬は重大発表をする。

十人の力を合わせて、スポーツの頂点を取る。

何を言っているのか、と疑問に思う住人たちに清瀬はそのスポーツを言う。

それは東京箱根間往復大学駅伝競走――通称“箱根駅伝”

それを聞いた瞬間、部屋は怒号や混乱が渦巻いた。

しかし、清瀬は住人たちに女にモテる、就職に有利など様々なことを吹き込んで住人たちを駅伝に参加させることに成功。

こうして、住人たちは嫌々ながらも駅伝出場を目指すこととなる。

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本『レベル7』 宮部みゆき

『レベル7』 宮部みゆき 新潮文庫



レベル7まで行ったら戻れない――

謎の言葉を残して失踪した女子高生、貝原みさお。

彼女と仲良くしていた心理カウンセラー真行寺悦子は娘のゆかりと共に行方を追う。

別の場所では記憶を全て失った若い男女が同室で目覚めた。

なぜか腕には「Level7」の文字が浮かび上がっていた。

その男女は自分たちが何者なのかを調べ始める。

二つの追跡行はやがて交錯し、思いもかけない凶悪な殺人事件へと導いて行く。

緊迫の四日間を気鋭の作家が放つ。

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本『告白』 湊かなえ

『告白』 湊かなえ 双葉文庫




中学校の女性教師は、辞職する当日にホームルームで告白を始める。

その告白というのは、校内で亡くした娘のことだった。

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」

そして語られていく娘を亡くした事件のあらまし。

語り手が「級友」「犯人」「犯人の家族」と次々と変わり、様々な観点から見えてくる事件の全体像。

悲しくも恐ろしい人間の『告白』。

「週刊文春08年ミステリーベスト10」で第1位。

第六回本屋大賞受賞作。

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